Silent Sweetheart 【01〜40】

□Silent Sweetheart 【14】
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 椿に奪われた唇を、先に上書
きしたのは後藤だった。

「……頼むからもう少し警戒心
持て、達海」

 クラブハウスの真ん前でされ
たキスにわかりやすく驚いて、
後藤ってこんなに思い切りよか
ったっけ? と顔が熱くなるの
を自覚しながら動揺する達海に、
村越までが口づけてくる。

「全くだ。いっそ本当に、俺ら
がデキてるってばらしたいくら
いスよ」
「なっ――お前ら、こんなとこ
で、キ、キスして、なに言って
んの」

 誰かに見られたらどうすんだ
よ、と、いざそうなったら間違
いなく達海が一番強心臓だろう
に、そんなことを言ってみる。

「いい加減、気づいて欲しいか
ら言うぞ、達海。お前を欲しが
ってる奴は俺や村越だけじゃな
い。椿とか、他にも……いるん
だ」
「そ、そんなの、俺のせいじゃ
ないだろ! どうしろってんだ
よ!」
「どうもしなくていい、あんた
はな。だだもれの色気抑えてく
れって言っても無駄だろうし」

 なんだそれは。
 村越の言葉に憤慨しかける達
海の髪を、後藤が撫でる。

「ただ、覚悟しといてくれない
か」
「……なんの覚悟」
「どんなことになっても、俺た
ちに愛されるって覚悟だよ」

 ――恥ずかしい! こいつい
ますげー恥ずかしいこと真顔で
言ってるよ!

 達海は心の中でぎゃーっと叫
んだが、茶化すこともできず、
甘い顔で何度も頬に口づけてく
る後藤のなすがまま、不覚にも
耳まで熱くなってしまった。

「珍しいな、達海さんがそんな
に赤くなるなんて」

 そんな達海の顔を見て、村越
は僅かにほころばせた口許をそ
のままに達海の手を取ってゆる
ゆると愛撫してくる。

「〜〜、バカ、調子乗りすぎ、
だっ!」

 耳の後ろあたりがツンとする
ほど感じている達海を村越が軽
く笑うのを見て、つい五分前ま
で椿がどんな反応をするかと気
を揉んでいたくせに、と思う。
すると自然と村越を睨みつけて
いた。
 が、明らかに照れながら目線
だけで睨んでも、上目使いで拗
ねているようにしか見えない。

「……ホントかわいいな、あん
た」
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