Short Story 2

□Limit 30!
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 集まっているのは、いまやE
TUの主力となりつつある若手
たちだ。
 そしてそこになぜか、東京ヴ
ィクトリーと大阪ガンナーズの
数名もいる。

「なんでこんな居酒屋に代表ク
ラスの選手がいるんだよ……」

 呟いたのは宮野で、先程から
絡まれて萎縮しまくりの椿はた
だでさえ苦手な持田の玩具だし、
その椿に興味を示す大阪の窪田
と、賑やか関西コンビはもはや
意味不明である。

「遠征先で飲みったって、なん
でよりによって俺らとブッキン
グしちゃうんだ」

 呟く清川に、世良が激しく頷
いた。
 赤崎は知らんぷりで焼き鳥に
手を伸ばしているが、持田の椿
虐め……もはやそうとしか思え
ない……を必死に止めようとし
ている三雲や、爽やかにいい子
ちゃん発言を繰り返す城西など
を気にしていないわけではない
ようだ。
 当然だろう。
 こんな変な面子で座を囲んで
いるのだから。

「ねー、椿くーん。教えてよ、
達海さんの居場所」
「し、知らないっス!」

 椿はと言えば、先程からずー
っと、持田に同じ質問をされて
いるのだ。
 今夜、達海はどこにいるのか
……そればかりを尋ねられてい
る。
 クラブハウスには居なかった、
と言う持田の発言でETUのメ
ンバーが「わざわざウチのクラ
ブハウスまで行って確かめたん
だこの人!」と思ったのは言う
までもない。

「えー? じゃ、達海さんに彼
氏がいるってこと? この俺以
外に?」
「なんで彼氏……というか、持
田さん、達海さんの恋人なんで
すか?」

 至極当然な突っ込みは三雲か
らで、持田はつまらなさそうに
三雲を眺めてから、ふんっと鼻
を鳴らした。

「達海さんに似合う男なんて、
俺くらいしかいねーだろ。王様
同士だし?」
「達海さんは男が好きなのか?」
「城西さん……真顔止めてくれ
ぇや」

 真剣に尋ねた城西にビシッと
突っ込んだのは大阪の片山で、
畑はなにやら世良の肩に腕を回
して上機嫌だ。

「なんなんスかもー! この人、
うるさいんスけど!」
「なんやとー!? チビっこの
癖に!」
「なんスか! 身長のこと言う
なんて卑怯っス!」
「たしかに。世良さんが小さい
のは好きで小さいわけじゃなく
て、仕方なく小さいんスから、
チビは言い過ぎっスね」
「赤崎ー! お前も小さいって
言い過ぎなんだよ!」

 怒鳴る世良をまぁまぁ、と宥
めるのは宮野だ。

「堺さんはそんな世良さんが好
きなんスから、そんな気にする
ことじゃないじゃないスか」
「……そうだけどー」

 酒が入ってやや浮ついている
面々だ、もうすでになんだかわ
からない状態……いわゆるグダ
グダになっているのだが、堺と
世良、という意外な組み合わせ
に、ETU以外の者たちはキョ
トンとした。
 しかし、当然なこととして受
け止めているETU一同は、そ
れに気づかない。
 ウダウダする世良の背中を、
清川がポンポンと叩いた。

「世良は堺さんに想われてんだ
からいいじゃんか。俺らはさー
……」
「そうだよなぁ、赤崎は王子に
いじられてるばっかりだけど、
でも達海さん好きだし……椿と
宮野は微妙な関係だけどやっぱ
り達海さん好きだしなぁ。俺だ
って、石浜いるけど達海さん好
きだもんなぁ。なんなんだろ、
達海さんのあの魅力って」
「……ETUって、変態の巣窟
ですか」

 三雲の言葉は至言だろう。
 城西は意外にも平気な顔で、
愛があるのはいいことだ、など
と頷いているし、畑と片山はお
互いを見てからなにか複雑な雰
囲気を漂わせた。
 窪田はというと、いつの間に
か椿の横にいて、わは、と呟き
ながらその顔をじーっと見つめ
ている。
 それに気づいた宮野はなんだ
か面白くなさそうだ。

「ちっ、お前らさー、達海さん
と自分が似合うとか本気で思っ
てんの? 役者不足だよ、絶対」

 と、持田は酷い。
 しかし、意外にも反論したの
は三雲だった。

「達海さんと持田さんじゃあ、
腹の探り合いして終了じゃない
んですか?」
「……三雲、お前、いい度胸だ
な、え?」
「ヒッ、も、持田さん、目がマ
ジだ……!」

 怯えたのは世良で、慣れてい
るのか、三雲は軽くため息をつ
いただけだった。
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