Silent Sweetheart 【41〜**】

□Silent Sweetheart 【68】
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 後藤は英語ができないし、リ
チャードも日本語ができない。
 声を掛けたところで話ができ
ないのに、後藤はリチャードと
話をしてみたかった。
 だが、どんな話をするという
のだろう?
 どんなオファーが来ているの
かは聞けないだろうし、達海の
過去の話も聞けはしない。
 話すことなどないな、と思い
なおして、後藤は首を振る。

「Oh、ゴトー!」

 しかし。なぜかリチャードの
方が後藤を呼んだ。
 後藤は驚いて、リチャードを
見る。

「えっ……なんだ?」

 驚いているうちに、なんだか
胡散臭い外国人は汗だくになり
ながらこちらにやってきて、な
にかをまくし立て始めた。
 それこそまさに、マシンガン
のように、だ。

「えっ、えぇ!?」

 なにを言っているのかさっぱ
りわからない。
 指を突き付けて怒っているか
のような表情をしていると思え
ば、天を仰いで神様にすがるよ
うな仕草をしているリチャード
に、後藤はついていけない。
 ちょっと待て、俺はいったい
どうしたらいいんだ!? とい
う気持ちでいる後藤は、冷や汗
を流しながら徐々に後退する。
 リチャードが詰め寄ってくる。
 やはり徐々に後退する。
 そんなことをしているうちに、
後藤とリチャードはジリジリと
クラブハウスに近寄っていた。
 すると。

「なにやってんの、お前ら?」

 達海がいつものダルンダルン
な格好のままそこにいて、リチ
ャードが目の色を変える。
 そしてなにやら達海に詰め寄
っていき、達海は途中、後藤の
方をちらりと見た。
 え、と思った後藤だったが、
達海が胸を反らして何かを宣言
すると蒼白になったリチャード
が「ジーザス!」と叫んでがっ
くりと地面に膝をついたので、
なにかダメージを与えるような
ことを言ったのだろう、と思う。




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