Silent Sweetheart 【41〜**】

□Silent Sweetheart 【66】
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「そう言えば、なんで椿はずっ
と赤崎に襟首掴まれてんだ」

 尋ねると、赤崎が冷たい視線
を椿に送る。

「こいつ、放っとくと達海さん
に襲い掛かるんで、捕獲してん
ス」
「なに?」

 襲い掛かる、という不穏な言
葉に椿を睨むと、椿はアワワ、
という顔をしながら首を振った。

「お、襲わないっス!」
「嘘つけ! お前、達海さんネ
タにして毎晩抜いてんだろうが!
しかも、達海さんのひとりエッ
チまで覗きやがって!」
「……なんだと!?」

 ひとりエッチ!? という、
聞き捨てならない単語に達海を
見れば、達海は思い切り苦々し
い顔で赤崎を睨んでいた。

「赤崎ぃ〜……お前、こいつの
前でなんてことをバラすかね!」
「あれ、ひとりエッチとか、し
たことないんスか、村越さんた
ちの前で」
「ねぇよ!」
「えぇっ!?」
「って、なにその驚き様! な
にお前、丹さんに見られながら
とかしてんの!?」

 世良の驚きに、赤崎が困惑し
たような顔で頷く。

「ひとりでするとき、どういう
風にしてるのか見せてみろって
言われて……俺、てっきりみん
なそういうことさせられるのか
と思ってた……!」
「させられねぇよ! お前の普
通はちょっとおかしいよ!」

 世良が噛みつく間に、達海が
ちらりと村越を見る。
 まさか……という目だ。
 村越はふむ、と思いながら達
海を見つめて、それから微かに
笑みを浮かべる。
 その表情を見て達海がゲッ、
と小さく呟いたのは、明日には
その要求がなされると予感した
からだろう。

「……赤崎さん、丹さんと付き
合ってんスか?」
「えっ!」

 そう言えば椿は知らなかった
のか、と今更ながらに驚く達海
だったが、当の赤崎は開き直っ
たのか、そうだ! と言い切っ
た。

「なんか文句あんのか!?」
「えっ!? な、ないっス!
や、じゃあ赤崎さんも後ろ弄っ
たりすんのかなー……って、う
わぁっ、ごめんなさい!」

 達海が拳を振る上げたので叱
られる犬よろしく縮こまった椿
だったが、カァ、と赤くなった
ところを見ると、赤崎も後ろを
弄る派なのだろう。
 も。
 ようするにそれは、達海も。

「なんだ、アンタ、もう後ろじ
ゃねぇとイケなくなったのか?」

 それは純粋な疑問だった。
 確かに達海は段々と、前に触
れずとも達することが増えてき
ているのだが、まさか自分で触
れるときもそちらを使っている
とは思っていなかった。
 以前に目撃した事後処理の光
景は目に焼き付いているが、あ
くまで事後処理だと思っていた
のに。

「……! バカ!」

 しかし、罵られたということ
は正解なのだろう。
 まさかその領域まで達してい
たとは。これは嬉しい誤算だ。

「そうか……へぇ、そうなんだ
な」
「な、なにニヤニヤしてんだよ、
気持ち悪ぃ!」
「いや、達海さん、どんどんや
らしくなってくな、と思ってよ。
嬉しいもんだな」
「アホか! 明日、変なことし
やがったら笠さんに頼んでまた
禁欲生活に逆戻るかんな!」
「どれくらい?」
「……三日くらい」

 その言葉に、思わず吹き出し
た。
 三日。
 それが達海の限界点か。




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