Silent Sweetheart 【41〜**】

□Silent Sweetheart 【66】
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 結局なにしたってかわいいん
だよ、あの人は。
 と思いながら眺める背中は、
相変わらずのダルンダルンなシ
ャツに包まれていて、これから
帰るところらしい世良やら赤崎
やら、赤崎に襟首を掴まれた状
態の椿やらが取り囲んでいる。
 まったくもって人気者だ。
 と思っていると。

「……おっ?」
「……、」

 くりっと、達海がこちらを振
り返ったではないか。

「……かわいいなぁ」
「……だな」

 ふたりの姿を見つけてニヒー、
と笑い、周りに世良たちしかい
ないことを確かめた達海は、な
んと、こちらに向けてちゅっと
投げキスを寄越した。
 その悪戯っぽい笑みがまた、
なんとも言えない。

「くっそ、明日がやっと解禁日
か!」
「もう、達海からもっとってね
だられるまでしつっこいキスし
てやる」

 村越が苦れば、後藤も欲望を
言葉にする。
 まったくもって困った男に惚
れたものだ。
 しかも、いまのアレなどは絶
対に無自覚な方の達海で、ただ
単に反応が面白そうだから、と
いうくらいのものだろう。
 見ているこっちが欲望を募ら
せることになるなどとは露程も
思っていないに違いない。
 そういう無防備なところが魅
力でもあり、また、酷いところ
でもある。
 村越は後藤と顔を見合わせる
と、互いに苦笑を浮かべている
のを確認してから、明日どうす
る? と尋ね合った。

「そうだなぁ……俺の家でいい
ぞ?」
「仕事終わりそうな頃にメール
くれ。俺は達海さんをテレビか
ら引きはがしとく」
「頼むぞ。あ、でも、勝手に始
めるのはナシだぞ」
「……ちっ」
「抜け駆けしたら、俺の家でお
前ひとり、お預けだからな」
「性格悪ぃな、後藤さん」
「どっちがだよ」

 言い合って、最後は牽制の為
に睨み合って別れた。
 村越はまだ若手とキャッキャ
している達海に歩み寄り、その
茶色い髪をフワフワと撫でる。

「なに話してたんだ?」

 達海に尋ねれれて、村越はそ
の襟首を掴んで耳元に唇を寄せ、

「明日、あんたをどうやって抱
くかの相談だ」

 と囁いた。
 すると達海の頬が見る間に赤
く染まって、驚くくらいの表情
を浮かべた。

「……いっぱいしてくれる?」

 言われて、下半身が疼く。
 村越は笑みを浮かべながら頬
に唇を押し当てた。

「ちょっとー、村越さん、俺ら
いるんスけど……」
「そういうのはふたりきりのと
きにしてもらえませんかね」
「いいなぁ……」

 世良が照れ、赤崎が呆れ、椿
に羨まれた村越は、ほんのりと
頬を染めている達海を抱き締め
たい衝動をなんとか堪えて体を
離した。




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