Silent Sweetheart 【41〜**】

□Silent Sweetheart 【65】
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「はいはい、襲わなきゃ別にい
いよ。しかし本当、お前、犬っ
ころだね」

 髪を軽く撫でてやると、満面
の笑みを浮かべる椿は愛嬌のあ
る顔をしていてかわいく思う。
だが、そんな達海の様子を見て
いた赤崎は容赦がなかった。

「達海さん、そいつ多分、ほと
んど毎晩、達海さんオカズにし
てんだと思うんスけど」
「イっ!?」

 そんなバカな、と思って椿を
見ると、椿はギクリと固まって
いる。
 それは要するに、赤崎の言葉
の肯定に他ならない。
 達海はその額を弾いた。

「お前……こんなオッサン相手
に……っていうか、オッサンの
妄想で無駄打ちしてんじゃない
よ」
「だって……達海さんが、かわ
い……」
「あーはいはい、かわいいは禁
止! 俺はかわいくない!」

 椿の言葉を遮ると、異論は別
のところから出た。
 堀田だ。

「かわいいから困ってるんです
よ、達海さん。あなたが無自覚
にかわいさ振りまいてるから、
若手が躓いて転んで急降下する
んです」
「はぁ? なに言ってんの、堀
田。お前も頭、おかしくなった
わけ?」
「なってないですよ。本当に困
った人だなぁ」

 苦笑いの堀田を睨みながら、
達海は溜息をついた。

「っていうか、なんでお前らは
ここにいんの?」
「いったん寮に戻った椿が、ボ
ケーっとしてたかと思ったら急
に立ち上がっていなくなるから、
後つけてきたんス」

 赤崎の答えに、堀田も!?
と問うと、堀田は俺は引率です、
と言った。
 二十歳を超えたいい大人の野
郎共に引率が必要なのかどうか
は定かではないが、しかしとに
かく三人は椿を尾行してきたよ
うだ。
 逆に、一番そういうことを面
白がりそうな丹波が不在である
ことに、達海は驚いた。

「丹さん、買い物行ってたんで。
シェーバーないとか言って」
「あ、そう」

 なんのかんので丹波と一緒に
いたらしい赤崎の言葉をサラリ
と流して、達海はもう一度椿を
見る。
 その股間は、大きくなったま
まだ。

「……お前、元気だねぇ」
「えっ……あっ、はい!」

 はい! じゃねぇよ、なにい
い返事してんだよ、とツッコミ
を入れたくなる達海は、まぁ俺
だってこの年で自家発電しちゃ
うくらいだし、元気っちゃー元
気なのかね? などと思いなが
らふたりの恋人を思った。

「とりあえず、堀田。そいつの
ソレ、どうにかしてから帰して。
さすがにそのまま連れて帰られ
ちゃあ、お巡りさんに逮捕され
ちゃいそうだし」
「はい」

 堀田が頷いて、椿を無理やり
立たせてトイレに放り込む。
 椿がナニをどうこうするため
の原動力はやはり昨夜の自分の
痴態なのだろうか、と思うとか
なり恥ずかしいしゲンナリする
のだが、起きてしまったことは
もう仕方のないことだ。
 達海は自分の中で、椿は本気
でヤバイ、と改めて決定して、


 禁欲生活の残りの日数を数え
たのだった。




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