Silent Sweetheart 【41〜**】

□Silent Sweetheart 【64】
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「別に、聞く気じゃなかったん
だから許してやれよ。つーか、
あのタイミングで入ってきて、
聞くなっつー方が無理だろ」
「……すまん、達海」

 本当に、心底申し訳なさそう
な態度で、後藤が謝る。
 達海はそんな姿を見ながら、
全くもう本当にこいつは! と
呆れた。

「それ、どれに対する謝罪なん
だよ? 立ち聞きしたことか?
それとも、今朝のこと?」
「どっちもだ。本当に悪かった。
配慮が足りなかった」

 謝る姿は真摯なもので、達海
はしばし後藤の顔をマジマジと
見つめてから、思い切り溜息を
ついた。

「どっから聞いてたわけ」
「よくわからないってあたりか
ら……かな」

 では、その前の笠野が仕掛け
ようといたことについては耳に
入っていなかったのか、と思う
とわずかばかり安堵する。
 無駄に険悪になられては叶わ
ない。

「まったく……」

 達海は呆れながら後藤の情け
ない顔を……今朝と同様の顔を
している……見つめて、それか
ら肩を竦めた。

「メシ」
「……ん?」
「メシ、まだ食ってない。一食
も」
「……えっ!? 今までなにや
ってたんだよ、お前!?」
「やることあるって言ったじゃ
ーん」
「それにしても限度があるだろ
限度が!」

 驚いた後藤が慌てて達海の手
を掴み、そして何が食べたいか、
と尋ねた。

「えっとね、後藤?」
「こら!」
「だって、本当だし。でもまぁ、
勝手に約束したのは俺だしね。
我慢してやるから、ハンバーガ
ー食いに行こうぜ。高いやつ」

 チェーン店ではなく、こう、
何層なんだよっていうくらいの
が食べたいと主張すると、後藤
は苦笑しながら頷いて笠野に一
礼した。

「メシ食いに連れて行きます」
「おー。そうしとけ。空腹で倒
れられたら記者たちになに書か
れるかわかったもんじゃねぇ」

 笑う笠野に軽く手を振った達
海は、後藤の車に乗り込むと、
すぐさまその唇に己の唇を重ね
てやった。
 しかも、ちょっと煽るような
キスを。

「……達海!」

 案の定、後藤は慌てる。
 それを見て溜飲を下げた達海
は、笑いながらこれであいこだ
ろ、と言い切る。
 後藤がなんとも微妙な顔にな
るのが最高におかしかった。

「我慢すんのってつらいよなー」
「……くそ、十日経ったら覚え
てろよ!」
「はいはい、覚えとくよ。でも
さ」

 今度腰立たないくらいになっ
たら、今度こそ一か月だかんね、




 達海はニヒっと笑って宣言し
たのだった。





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