Silent Sweetheart 【41〜**】

□Silent Sweetheart 【64】
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 なにをこんなに苛立っている
のか、きっと後藤は理解してい
ない。
 そんな後藤と顔を合わせてい
るのは正直、ずいぶんとしんど
そうだ。だから部屋を出た。
 もちろん、やることがあるの
は本当だ。
 次の試合に向けて、昨日一晩
呑みで使ってしまった分、やら
なければならないことは山ほど
ある。
 達海は徒歩でクラブハウスに
たどり着くとシャワーを浴びて
歯を磨いて、頭をすっきりさせ
たところでパン! と自分の頬
を叩いた。
 シャキッとしろ、と自分自身
に喝を入れる。
 それからしばし、達海はテレ
ビ画面に釘付けになっていた。
 どれほどそうしていたのか、
ふと集中力が途切れて目を上げ
たとき、ぐぅぅ、と盛大に腹が
鳴ったので食事をしていないこ
とに気づいた。
 時計を見ると、すでに二時を
回っている。
 どうりで目の奥が痛むし、肩
もパンパンだと思った。

「ありゃ。ずいぶん頑張ったな、
俺」

 一人で呟きながら大きく伸び
をして、それから何か食べに行
こうと部屋を出る。
 すると、そこに笠野がいた。

「あれ、笠さん。なにやってん
の?」
「お前の様子見に来たんだ」
「俺? なんで?」
「お前が、後藤や村越が恋しく
なってヤっちまってねぇか、確
かめに来た」
「……暇人め!」

 悪態をついてケッと吐き捨て
ると、笠野はいつもの胡散臭い
笑みを見せながら達海の肩を叩
いた。

「無事みてぇだな」
「無事ってなんだよ」
「ヤってねぇなってことだよ」
「気持ち悪ぃよ、笠さん。なに
ひとの顔みて、ヤったかヤって
ねぇか判断してんだよ」
「バカ、お前、体のこと心配し
てんだ」

 ただでさえ、普段からずいぶ
んと濃い目のセックスをするよ
うだから、と笠野が言うので、
達海は心底嫌だと思いながら、
人のセックスの話にまで首突っ
込んでくんなよ、と不満を述べ
た。
 笠野は確かに達海の体を心配
してくれているのだろうが、と
はいえ、そこまで言うのもどう
なのだ。
 まぁ、後藤とも村越とも、最
近濃すぎたのは否めないが。

「お前、あいつらに抱かれる度
に、自分が男にとって魅力的な
カラダになってんのわかってね
ぇな?」
「……変態なの、笠さんって」
「変なのはお前だろうが! そ
のうちどこぞの野郎に奪われて
から泣くぞ、そんなんじゃ!」
「えぇっ!? なに、笠さん、
そんな趣味あったんだ!?」

 変態だ変態だとは思っていた
けれど、ここまでだとは、と引
いて見せると、笠野はこのバカ、
という顔をずいっと近づけてき
た。




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