Silent Sweetheart 【41〜**】

□Silent Sweetheart 【63】
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「そりゃあそうだろ。お前らだ
けで楽しく呑んで。俺も参加し
たかった」
「えぇー、GMがそんなことで
拗ねるなんてどうなんスか、後
藤さんっ!」

 世良に笑われるが、後藤は思
い切り胸を張った。

「なに言ってんだ、お前ら今日、
サッカー選手として呑んでない
だろ? 男としての呑みなら、
俺だって達海自慢したかったぞ」

 酔っ払い相手の会話なので、
恥ずかしさなどさっぱりなかっ
た。
 記憶が飛ぶ程ではないと思っ
たし、そもそも世良に至っては
本当に呑んでいるのかと思う程
素面に近い。
 しかし、そうだと思ってはい
ても、プレイヤーとしてではな
く、ただの男としてなら誰にも
……例え村越にもだ……負けは
しないと思っているので、達海
自慢は自分も是非参加したかっ
たというのが本音だ。
 ついでに、他のカップルの話
も聞いてみたかった。

「……今度セッティングします
よ。また呑もうって言いました
から、後藤さんも行きましょう」
「バカだな、お前がいるのに俺
まで行ったら、達海の話だけで
二時間いくぞ?」
「……」

 あぁ、と村越が頷く。
 すると、世良と赤崎もあぁ、
と言った。

「達海さんの話しかしなさそう
ですよね」
「他の三人がご馳走様ってなり
そうですよね」
「ていうか、丹さんの場合、俺
の自慢とかしなさそうですけど
ね。かわいいこととかしてねぇ
し、達海さんと違って」
「俺もっス。堺さん、俺のこと
話すとかなさそうっス」
「……」

 ここで村越がダンマリを決め
込んだのはどちらの方向性なの
かと思ったが、表情を見る限り、
口下手な村越では語りきれない
ような話が繰り広げられたのだ
ろう。
 と、思うと、ますます参加で
きないのが残念だ。
 かと言って、自分が他の三人
を誘うのはおかしいだろう。
 後藤は苦笑いしながら、そろ
そろ行こうと村越を促した。

「……あ、」

 しかし、運転席に乗り込もう
とした瞬間に閃いて、世良を呼
びつける。

「なんスか?」
「うん。メールな」
「さかいーた?」
「そうそう。あれ、堺ん家、じ
ゃないか?」
「へ?」

 後藤はそう言って、最近弄っ
たスマートフォンのキーを思い
出していた。

「丹波、スマホじゃないか?」
「……最近買い換えてましたけ
ど」
「だったら、多分そうだ。最後
の二文字、力尽きたんだろ。早
く行ってやれ」

 言うと、世良と赤崎は顔を見
合わせてから頷いた。

「って、村越は乗らないのか?」
「俺はいい。一緒に行ったら、
笠野さんとの約束を破りそうで
怖ぇ。十日でもキツいのに、そ
れ以上とか無理だ」
「あぁ」

 今度は後藤が頷く番で、村越
はタクシーを呼んで別途帰るこ
とになった。
 世良と赤崎は堺の家へ。




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