Fantasy

□紅黒ニ秘スル【幕間】
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 そんな言葉で、後藤には理解
できる。
 達海は悪夢を見たのだ。両親
が亡くなったとき、達海は二度
ともあの惨劇の過程を見ている。
 怖くて、泣きたいほど怖くて、
それも涙を見せない達海が唯一
泣けるのは情事の最中、悦すぎ
て泣くときくらいだ。
 いまはきっと、怖い夢を見て、
それを忘れたくて後藤に縋り付
いている。
 後藤はなににも気づかないフ
リで、達海を泣かせるために鋭
く突き上げた。
 目一杯犯して、達海の鎧を剥
がしていく。
 もう無理、と泣いても、やめ
てはやらなかった。

「……なにやってんだ、後藤さ
ん」

 次第に声を我慢できなくなっ
た達海が我を忘れて喘ぐのでよ
うやく起きた村越は、ボロボロ
と涙をこぼしながら嫌がる達海
を後藤が無理矢理犯しているよ
うに見えたのだろう。
 一瞬だけ険しい顔をしたが、
すぐに事情を察したらしい。
 感じすぎてつらくなってきて
いる達海の顔の前に陣取った。

「よかったな、達海。大好きな
村越のだぞ」

 優しく声を掛けると、達海は
緩く首を振ったが、村越は容赦
しなかった。
 明け方、達海の涙が涸れて、
声も掠れてきた頃、まるで糸の
切れた操り人形のように意識を
手放すまで、後藤と村越は達海
を攻め続けた。



「で、この様かよ!」
「すまん、黒田!」

 後藤は心の底から黒田に謝っ
た。
 案の定、達海は床から起き上
がるどころではなくなり、入っ
ていた宴席を断ることになった
のだ。
 体調が思わしくないと出した
文に心配して駆け付けた杉江と
黒田は、褥の上から動けず、男
とまぐわった痕が如実に残る達
海の姿に絶句して……予想通り
に黒田が発狂している。

「つか、後始末くらいしとけよ!
まだ濡れたまんまじゃねぇか!」
「す、すまん……」

 怒鳴る黒田に謝るのはもっぱ
ら後藤と村越で、杉江は初めて
見たらしい性交後の達海の姿に
釘づけになっている。

「ごとー……水、欲しい」

 まだふたりが中に放ったもの
を出してもいない達海が身じろ
ぎすると、くちゅ、という卑猥
な音がするからたまらない。
 いや、一度きれいにしたのだ
が、宴席に出ないと決めた後で
……後藤と村越はふたりして、
十代の若造のように盛ってしま
ったのだ。
 結局、もう無理だと繰り返す
達海を、杉江と黒田が来る直前
まで食い散らかしていた。

「……飲めないんだけど」

 わずかに果汁を混ぜた甘い水
を注いだ椀を渡そうとすると、
達海は唇を尖らせて指先に力が
篭らないのだと云った。
 全身の力が抜けているらしい。

「ん……、もっと」

 口移しで飲ませてやるとお代
わりをねだられ、性懲りもなく
欲望が頭をもたげそうになる。

「だーっ! 人前だってんだよ
っ! ざけんな!」

 黒田が顔を赤くしながら怒鳴
り、杉江は若干前屈みになって
いて、抱き締めた達海にもたれ
掛かられる心地よさを享受して
いる後藤は、甘んじてその怒鳴
り声を受け入れた。

「というか、その格好、どうに
かしてください……下半身に悪
いですから!」

 杉江がそう云うのも無理はな
い。
 達海は襦袢を羽織っただけで、
おまけにその襦袢さえ着崩れて、
ほとんど肌を隠していないのだ。




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