Silent Sweetheart 【41〜**】

□Silent Sweetheart 【66】
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 千葉との一戦があった。
 結果はETUが勝利し、達海
は勝利監督インタビューで好き
放題していた。
 それを眺めながら、村越は、
いつもとは何かが違った応援の
空気や、今日の試合運びなどに
ついて考える。
 自信を持つべきところと、反
省をするところ。
 どちらもあって、それを見つ
けると自分はさらに成長できる
という思いがする。
 サッカー選手として、それは
とても重要なことで、そう思え
る環境を作り出してくれた達海
には感謝している。
 監督としての達海に、だ。
 最初は無茶、無理、無謀な野
郎だと思ったが、だがなにより
もサッカーを愛する男が振るう
手法は結果的にETUの力を底
上げしている気がしたし、それ
に伴い自分たちも成長している、
そう思える。
 勝ったときは特に。
 不安があるとすれば、もしも
連敗が起きたとき、どうなるか
なのだが、村越はこの時、それ
をさしたる問題と捉えなかった。
 後にこの思考が大きな転換点
となることに気づいて葛藤する
ことになるのだが、とりあえず
現段階では浮上している気分と
チームの状態を喜ばしく感じて
いるばかりだった。
 しかし。

「……十日って、思ったよりも
長いっスね」
「だよなぁ」

 村越は後藤と共に、クラブハ
ウスの二階、手すりに身を持た
せて溜息をついていた。
 後藤とこんな風に溜息をつい
てしまう理由はもちろん、十日
間の禁欲生活のせいで、先日、
達海からの濃厚なキス以来、村
越は本当にしんどい思いをして
いる。
 もちろんそれは、言いだしっ
ぺというか、勝手に決断を下し
てしまった達海とて同じことで、
あんなキスを仕掛けてくる程に
は飢えているはずだった。

「でも、禁欲明けでまたクタク
タにさせたら、それこそ笠野さ
んから一ヶ月とかくらいそうだ
しなぁ」
「十日でこんなにきついのに、
一ヶ月なんて爆発するぜ」
「だよなぁ」

 またもや後藤と共に溜息をつ
く。
 ここのところ、フロントはな
にやら若干騒がしく、それが気
にならないかと聞かれればもち
ろん気になるわけだが、とはい
えそれは自分が出る幕ではある
まい。
 どうやら後藤にすら詳しい話
は降りてきていないらしく、達
海も平然としているので、村越
の目下の悩みはこの、ありあま
る情欲の炎である。

「我慢の限界、って思ったのは
久しぶりだ」
「だよなぁ……あ、達海」

 後藤も同じように限界に達し
ようとしているらしい。
 と思っていると、階下にはそ
の達海の姿が見えた。

「……ちくしょう、かわいいな」
「かわいいって言うと嫌がるの
がまたかわいいんだよな」
「そうなんだよな」




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