*Starry★Sky
□土萌【冷たい雨、傘は君が持っている】
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[今日は午後から雨が降る確率が30%です。念のため折り畳み傘を持った方が良いでしょう。
夜になったら雨はやみ___]
テレビの画面は天気予報を目の前の名前に知らせた
「30%なら良っか」
名前が傘を持つのは40%から
それ以下はだいたい降らないと
自分の経験上でわかっていた
「おはよう!」
いつものように教室に入る
「はよ〜」
クラスの男子達が返す
土萌と目があった
「おはよう^^」
「おはよう。あ、名字が聴きたいって言ってたフランスの音楽
持ってきたよ」
「ホントに!?ありがとう♪」
ぶっちゃけオススメ音楽を聴くほど音楽は好きじゃない
だけど羊のオススメなら別
私は羊が好きだから
羊が転校してきた時から一目惚れだった
「羊はどんな時この曲聴いてるの?」
「ん〜…夜に聴く時が多いかな。星空を見ながら聴くのがリラックス出来るんだ」
ほんのちょっとの会話も
何気ない一言も
全部
全部、大切なんだ
HRが終わって、下校
教室の窓を見ると雨が降っていた
「あ〜あ…持ってくればよかった」
靴を履いて濡れて帰ろうと思ったら羊の姿が見えた
右手には傘
思い切って一緒に入れてもらおう!
「羊___ 」
羊がひろげた傘の下には「ありがとう」と言って
隣に寄る月子の姿が見えた
「ん?名前?」
呼んだのが聞こえてしまった
「っ、月子と相合傘?ずるいぞ羊w」
何て言おうか一瞬迷った
だけどいつも通りにした
「名前、傘あるの?」
月子が聞く
「うん、あるよ^^降水確率30%からは持つようにしてるんだ☆」
「そっか〜。私も持ってくれば良かった…」
嘘
30%で傘は持たない
「月子が忘れても僕が入れてあげるよ。あ、名前。
今日かしたCD良い曲だから、ちゃんと聴いてよ。じゃぁね」
「聴くよ!…バイバイ^^」
2人は1つの傘で歩いて行ってしまった
名前は1人、冷たい雨の中走って帰った
2人に会わないように、遠回りで
「良かった…CDは濡れてないや」
袋に入ってたCDは無事
夜、名前は窓の外を見ながら音楽を聴いていた
涙が止められないほどに溢れ出てきた
わかってる
羊は月子が好きって事
転校した時、月子のほっぺにキスをした
小さい頃からずっと月子を想ってて
1人の女の子だけをずっと想ってて
いくら嫉妬しても
月子に敵わないなんて知ってる
素直で純粋で真っすぐですごく良い子
全部に負けてる
勝ち負けって思ってる時点ですでに私はダメな子
悔しいよ
「雨…やまないじゃん…星見れないよ…」
天気予報は嘘だった
羊が夜空を見上げながら聴くと言ってたから
せめてこの時だけ同じでいたいの
心の中だけでも傍にいさせて
同じ事してるって、思わせて
窓にあたる雨と名前をぼんやり照らしてる満月をただ見ていた
流れる曲なんか聴こえないよ
聴けないよ
冷たい雨、傘は君が持っている
(だけど私は入れない)
(君の傘は他の子のための物だから)