浮気×価値無少女

□ゼロ
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3日後、見慣れない天井が目に入る



「…どうして」





名前は頭を強く打ったが事故の後すぐに車が通り救急車を呼んだのだ


医者には生きてるのが奇跡と言われた



アクセルを思いっきり踏んだのだが途中で意識を失い、
左足でブレーキを踏んでいたのだという




いつのまにか無価値になってしまった


無価値からもう3日も過ぎてる



あぁ



ゼロじゃない



マイナスになってくる価値




死ぬ覚悟さえも与えてくれない神様



ほんの少しのチャンスで良かったのに



なんて酷いんだ




なんて残酷の始まり方なんだ









***





2週間のリハビリを終えた頃ボロボロの携帯の電源を久々につけた




タカちゃんからの着信やメールが何件も来てた


丁度タカちゃんから電話がかかってきた


「…もしも〜し」


躊躇しながらも電話に出る

そして月曜に会う事になった

運転免許は取り消されたのでタカちゃんが近くまで迎えに来てくれた



「…乗れよ」

車に乗ろうとしない名前


「ほら」

手を引っ張り後部座席に座らせた

「…」

沈黙のままいつもの場所に着く



タカちゃんは後ろに座るとすぐに名前は上に乗っかった

「なんで会いたいって言うの?もう価値ないよ?」

「るせぇ。死ぬなって言ったろ。」

少し怒り気味の声色

「…死んでないよ」

「自殺未遂したんだろ」

「…」

何も言わずに両手をタカちゃんの頬にそっと置いた

冷たい手が頬を触れる


「…なんだよ」

細い右手首を大きな手で掴む

「ほっせぇ」


「ねぇ」


タカちゃんの手から右手を離し、今度はタカちゃんの手首を掴む


小さな手では太い手首を完全に掴む事はできない


「これだけ」

「あ?」



名前はキュッと力いっぱい手首を握る


「ウチの右手、これくらいの握力しかないの。事故で神経やられたみたい。」


思い切り握ったとは思えないほどの弱さ


涙を流し、かすかに震えている



「もう会いたくない?」


マイナス価値のウチに会いたい?


「タカちゃんを満足させる事もうできないよ」


「…最初から満足してねぇよ。けどお前は俺に会いたいんだろ?」


「捨てられるなら死んだ事を悲しんだままでいてほしかった。
いつか、死んでもどうでもいいって日くるでしょ?」

「こねぇよ。お前こそ他の男みつけてどっか行くだろ」

「行かない」

「行くね」


深いキスをした後名前を押し倒す



「ん…っ」


何度も深いキスをする



強く重ね合わせた大きな手に握力のない右手で力いっぱい握り返した













せめてアナタに捨てられるまでまだ価値はあると言わせて



まだ1の価値がある



アナタが会ってくれるなら



まだゼロでもマイナスでもないと言わせて







まだ生きていたい






いつか終わるアナタのために








END

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