浮気×価値無少女

□価値ある内に
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「もうすぐ誕生日だよ」



いつもの場所で、車内で行為を終わらせた後寂しげに明るく言った


タカちゃんの上に向かい合って座る


「いつ?」

「今週の日曜。」

「おめでと。ばばあ」

「ばばあ言うな!オヤジ!この腹ほんとオッサン」

少しプクッと出てる腹をつまんだ

「るせぇ。どうせ俺はオッサンだよ。」

「…オッサンでも好き♪」

「馬鹿」

しばらくジャレた後名前はギュッと背中に手を回し顔をうずめる


「…ハタチになったらもう価値ないよね」

「まだ19のガキが何言ってんだよ」

「タカちゃん10代の若い子の方が良いでしょ?」

「お前も十分若いよ」

「もうヤダぁ死にたい」

「何かあったのかよ」




死にたい理由は若くいたいだけじゃない


家族関係、将来の不安、金銭問題


自分には何もない


そんな自分に唯一価値あるのは「若さ」

その価値がなくなったらもう誰も見向きしない


社会も、世間も、そしてタカちゃんも。




タカちゃんに飽きられるのが1番怖い


いつかこの関係は終わる


要らないと言われる日が怖い




「もう時間?」

「…そうだな」

「ん〜…やだ〜…」

またギュッと抱きしめる名前

いつもはもっとうるさく騒ぐのに今日は元気なく寂しがる事に違和感を感じる

「…お前死ぬなよ?」


タカちゃんも手をまわし強く抱きしめた


「…誕生日の前の日に電話欲しい!」

「いいけど。夜な。」

「夜のほうが良い。」


ディープキスをした後名前はタカちゃんの上から降りる

「じゃぁな」

タカちゃんは名前の頭を引き寄せもう一度深く舌を絡めた


そして数秒見つめあう

「…死ぬなよ。死んだらもう会ってやらないからな。」

「なにそれ笑 変な文章」

「良んだよ。…来週の月曜会えるけど。」

別れの直前に次の会う約束をするのは初めてだった

「…会えるかわかんない」

いつもの名前ならすぐに「会う!」と言うが今日ばかりは言えない

「死ぬから?」

「予定がわかんないの。でも誕生日の前の日に電話してね」

「…いや、月曜絶対来いよ。じゃぁな」


惜しむようにドアを閉めたタカちゃん


その音が終わりの音



もう会えないよ



バイバイ



まだ価値がある内に






覚悟を決めて。










***





誕生日の前夜、名前は遠く人気のない場所に少し前から中古で買った車の中に居た


時計が進むたびに鼓動の音が聞こえそうなくらい大きく、早く動く


エンジンのかかった車はブルル…と音をたてる



数十分後、助手席に置いた携帯が光る


タカちゃんの名前が表示されたのを確認するとフットブレーキを外し、ドライブへレバーをおろした



そしてアクセルを思いっきり踏み込む











タカちゃん用に設定した着信が鳴り続いてる



今、どんな気持ちでかけてる?




心配してくれてる?



まだ会いたいって思ってくれてる?







約束通りかけてきてくれたのにゴメンね




でも、もう今しか出来ないの



価値があるから今すぐ消えたい




ごめんね



好きだよ




正しい恋ではないけど



悪い事ってのはわかってるけど



でもすごく愛してる



好きって聞けない分もっと会いたかった






バイバイタカちゃん





バイバイ価値ある自分







もう






怖くないんだね





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