*Starry★Sky

□ぬいぬい【優しい人】
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名前は夜、薬の店に居た

そして睡眠薬を手に取る

無言で見つめた後レジに持っていった


お釣りのないレシートをクシャッと丸めて、
睡眠薬のビンと一緒にポケットに突っ込む



*** 

ずっと向こうまで続く道を歩き続けた


そしてちょっとした山の丘に登って行った


名前はパサッと草むらに体を仰向けにし、星を眺めた


「…キレイだな…」

ぽつんと呟く


「……キレイすぎる…こんな町に、こんな奴の居場所はないよ…」


ガサッと向こうの草が動く

名前は体を起こさずに目線だけをそちらに向けた


「おい、何してんだ?」


出てきたのは今日、図書室であった人


不知火だった


「何でアナタが居んの」

予想外の人に名前は驚いて起き上がる


「様子がおかしかったからずっと着いてたんだ」

「…ストーカー」

「こんな時間にここまで遠くに行かなくても、星は見れるぞ」


腰に両手を当てて少し飽きれ気味だった


うざそうに名前は顔をしかめた


「ほっといて」

「ほっとけないだろ」

「ウチには良い人ぶんなくて良いから。こんなアナタの良い行動なんて皆に言わないよ?損だよ」

「別に良い。お前が心配だったからほっとけなかったんだよ」



ウチが心配?

ふざけないで


今日初めてまともに喋ったくせに

ウチの事何一つ知らないくせに


「そこまでしてこんなウチにも高感度持とうとしてんの?どんだけ偽善者」


名前反発するように言った


「何度でも言えば良い。ほら、帰るぞ。もう遅いし夜道は足元が見えないから危険だ」

「偽善者はキライ」


名前は立ち上がり来た道を走って戻る

「おい…!危ないから走るな!!」



何が?


アンタが歩けば


何も危ない事なんてない


ウチが危なくっても


アンタは何一つ危険じゃない



名前は走り続けた

だが男に追いかけられれば追いつかれるのは当然で


差はすぐに縮まった


その時、「あっ…」と名前の声がした



地面が足に着かない

どうやら階段だったようだ


そう言えばさっき階段を登ったかも

何も考えずに歩いてったから記憶が曖昧なんだな


そんなに長い階段ではなかった気がする

でもコンクリートで体を転がすのはきっと痛い



そんな事考えながら名前の体は崩れていく



手首にズキンと痛みが走る


だけどそこ以外痛みはあまり感じない


「…?」


状況がよくわからない

自分の痛みの感覚がバカになったのか?



「いてて…おい、大丈夫か?」


自分の下で生徒会長の声がした


「…!」

自分が乗っかっている事に気付いて名前はすぐにどいた


「手首怪我させちゃったな…ごめんな」


名前の手首を見るなり謝った


「なん…で?」


ポカンと不知火を見つめる名前


「見返りなんてないんだよ!?
それとも、ウチを使って自分は良い人ですって皆にアピールするわけ!?
助けたお礼も言わない相手でも、自分は良くする人だって言いたいの!?
ウチがこう言えば言うほどアンタは“良い人“にどんどんなって好都合なんでしょ!?」


叫ぶように不知火に言った


偽善者なんて大っキライ


惨めな自分が悔しくて唇をギュっと噛み締めナミダをひとつ流した


「…偽善者でも嫌いでも何でも言えば良い。俺が勝手にほっとけないだけだからな…」


不知火は座ったまま腕についた地面のゴミをパッパとはらった



「…アンタはウチに何て言ってほしいの」

キッと不知火を睨む


その目つきを優しく見る不知火

そして口を開く


「生きたいって言ってほしい」


冷たい風が吹き抜けた
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