03/15の日記

11:29
連載中「ナギ先輩」11
---------------




☆コメント☆
[やち] 03-15 20:50 削除
なつの細い腕に注射器の針が触れようとしたまさにその時



「分かった…」



低く唸るようなナギの声


セシルは眉をピクリと動かし注射器を持つ手を止めると次の言葉を待った



「お前の言う通りにする

俺はどうなってもいい

……だからなつには手を出さないでくれ

…頼む、セシルっ!!」



頭を下げ堅く目を瞑ったまま必死に懇願するナギ



(ナギ、この人の言いなりになっちゃ駄目)
なつはセシルの腕の中で涙で頬を濡らしながら首を横に振り続けた






「ふっ…ふはははははっ…」


不意にセシルの勝ち誇ったような笑い声が響く



「愉快ですね、これ程までに必死な貴方を見たことがない」


「なつさん、一体どんな手を使ったのですか?
実に興味深い…」

セシルは後ろからなつの顎を持ちあげると困惑しているなつの顔をまじまじと見つめた


「まあ、いい…私の元に貴方が戻ったのですから」


「一先ず今は解放して差し上げましょう」


セシルは満足気な表情を浮かべるとなつから腕を解いた


途端になつはフラフラと床に座りこむ…顔は青白く意識を保っているのがやっとであった


「なつっ?」


ナギは駆け寄ろうと足を前に踏み出すが、男達がそれを許さない

[やち] 03-15 20:53 削除

「…くそっ、離せっ」




「離してやりなさい…
ナギ…解っていますね」


言いながらセシルはなつにチラリと視線を送る



「ああ、俺は逃げたりしねぇ」


ナギはキッと鋭い眼差しをセシルに向けた



セシルが顎で合図すると男達はスッとナギから離れてゆく


ナギは直ぐ様なつに駆け寄り、縄を解くと白い手首には薄っすらと血が滲んでいた

ナギは優しくなつの身体を抱き寄せた
スッポリと胸に収まる小さな身体はまだ微かに震えていた


「ナギ…ナギぃ〜」


堰をきったように泣き出すなつの頭をナギは優しく撫でた


「怖い思いをさせて悪かったな…
身体、痛くねぇか?」


「うん、大丈夫…」


ゆっくりと顔を上げたなつは涙を流したまま無理矢理に笑顔をつくる


ナギはそっと涙を拭うとなつの髪を優しく梳いた


「…馬鹿、無理すんな…
ごめんな、髪…」

なつの長く艶やかな髪は片側だけ不自然に短くなっていた
それだけでどれ程の恐怖を重ねてきたのか想像できた

それなのに自分を思って下手な嘘をつく恋人がどうしようもなく愛しかった


「なつ…無事で良かった」

ギュ…

2人はお互いの存在を確かめ合うようにしっかりと抱き合った




「さあ、それくらいで良いでしょう」

セシルはそんな2人を引き離すよう再び男達に合図する

「ナギっ…」


2人は手を伸ばすが虚しく空を掴む


「なつっ…少しだけ待っててくれ!どんなことがあってもお前だけは必ず守る!!」


ナギの力強い言葉になつはコクリと頷いた



「ナギ…早速ですが、今回の取引についてお話したいことがあります」


「…貴方にはこれと引き換えにスーパーSを受け取って頂きたい」


後ろに控えていた男がナギにジュラルミンケースを渡す


(ズシン…)


「これは?」


「ふっ…これはほんの手付け金に過ぎません
この取引きが上手くいけばこの数十、いや数百倍にもなる

しかし、相手は国際テロ集団…
用心しなければなりません

貴方の役目は極めて重要だ

…やってくれますね」




「ああ、分かった…だが、なつにはぜってえ手ぇ出すなよ、何かしやがったら容赦しねぇ」

殺気を帯びたナギの瞳がギラリと光った


「ええ、分かっていますとも」


セシルはニコリとするとすぐに厳しい顔つきに戻る


「2人を下に連れて行きなさい」


.

[やち] 03-15 21:06 削除

21時50分


(後10分か… )
腕時計に目を落とすと直ぐに視線を廃倉庫に戻す


廃倉庫の周囲にはコンテナがずらりと並んでいた


身を潜めるには都合がいい
捜査官数人そして特殊部隊も待機している
何れも精鋭揃いだ


ここ数年セシルを追ってきた…
そして遂にアイツを捕まえる機会が巡ってきた


シンの友人も拉致されている
ここは失敗する訳には行かない



『レオナルド警部、全員配置につきました』

無線越しに聞こえてくる緊張を伴った部下の声


『了解…そのまま待機
ドクターギンが建物内に入り次第作戦を遂行する』


『…了解』



国際テロ集団と凶悪組織間の麻薬取引き…
かつて無い重責に押し潰されそうになる



レオナルドは腕の中にいる愛猫の背中を撫でた
ゴロゴロと喉を鳴らす可愛らしい様子を見ていると次第に冷静さを取り戻してゆく



暫くすると光の筋が辺りを照らし2台の黒塗りのベンツが止まった



迷彩服を着た4人の男達に囲まれて白衣姿の男が降りてくる


(ドクターギンだ…)


ドクターギンが倉庫の前に立つと
ギィーと音を立てて扉が開いた

5人の姿は倉庫内に吸い込まれてゆく


『バタン…』


再び扉が閉ざされるとそれを合図に特殊部隊が動き出し、あらゆる出入り口を取り囲む


倉庫外周に目を配っていると屋根に関係者以外の2つの人影に気付く


「貸せっ」


部下の双眼鏡を奪い取ると見慣れた人物が映る


「シンっ!…あれ程忠告したというのに」


「やれやれ、仕方ない…」

カチャ…眼鏡を指で押し上げる


(シン…どうするつもりだ)



突然目の前を白いものが横切っていく
瞬時にそれが自分の大切な飼い猫であることに気付く


(ミュミュたん、そっちは危ないでしゅよ!)

小声で訴えるも聞いてくれるはずもなくその姿は見えなくなっていた


「警部、どうかされましたか?」


側にいた部下が怪訝そうに声をかけた


「いや…何でもない」



再び倉庫に注意を向けた時だった
中から何かが割れるような音が聞こえてくる



『こちら、狙撃班…何者かによって建物内の照明が破壊されたもよう、新たに2人の男性の姿を確認』


(…シンの仕業か?)


「了解…狙撃班は2人を援護、一気に突入する!私に続け!」


無線を切るとレオナルドは拳銃を手に倉庫へ向かって走り出した




[やち] 03-15 21:09 削除

静まり返る倉庫内


『ギィー……バタン…』


扉が開くと5人の男達が入ってきた
迷彩服の屈強そうな男達と中央には一際異彩を放つ白衣の男…長身で銀髪、釣り上がった目は鋭く残忍さを含んでいた


『コツコツ、コツコツ…』


彼等は階段下のホールに待つセシル達とは少し距離を置いて歩みを止めた


「ドクターギン、お待ちしていました
…相変わらず時間ピッタリですね」


セシルが白衣を着た男にニコリとする


ドクターギンは冷ややかな表情でセシルを一瞥すると

「我々には時間がないのだ…早速取引きに入ろうではないか」


男の一人に目配せするとジュラルミンケースを持った男が前に一歩進み出た


「せっかちですね、分かりました…ナギ」


「……」


ナギは後方にいるなつに視線を向けた


再び両手の自由を奪われたなつは心配そうにナギを見つめている

なつの姿を見たナギは一度目を伏せると意を決したようにジュラルミンケースを手に同じ様に一歩進み出た


「さあ、中身を見せて貰おう」


両者共にその場でケースを開け、遠目から双方目当ての品を確認するとドクターギンとセシルは目を合わせて頷いた



「行け」
「行きなさい」


ドクターギンとセシルの声が重なる


迷彩服の男とナギがゆっくり歩き出した


そして、後一歩…と思われた時


『ガタンッ』と小さな物音



「誰だっ!」



物音の方へ視線が彷徨いそれぞれの武器を手に身構える


『メーン…』

高窓には月明かりに照らされて白く輝く美しい猫が一匹


「は…猫か」


誰もが気を緩めたほんの一瞬





『パンッ、パンッ、パンッ…』

乾いた音と共に照明がフッと消えた



「予備の照明をつけろ、早く」
苛立つセシルの声

「一体何が起こったんだ」

「くそ…何も見えねぇ…」


突然襲ってきた暗闇によって倉庫内は騒然とする


『ドカッ、バシッ、ドン…』


「ウェ…グッ…」


時々その中に呻き声が入り混じる




「どうなってるの?…ナギ」


見えない不安から思わず恋人の名を呟く
目を細め少しずつ暗闇に目が慣れてきた頃、近くに人の気配を感じた



「誰っ?」

なつは咄嗟に身構える



「シッ…静かに…今縄を解いてやる」


その声はなつがよく知っている声だった


.

前へ|次へ

コメントを書く
日記を書き直す
この日記を削除

11:28

---------------




☆コメント☆
[ムーン] 03-15 22:57 削除
やちさま!校了お疲れ様です!またスゴイのを書いて頂きありがとうございましたあ!!

まるで映画を見ているように倉庫の内と外で繰り広げられるドラマ。緊張感がビリビリと伝わってきました!

ミュミュちゃん…いい仕事してますね〜♪

助けに来た人はもちろんあの方ですよね

うふふ…続き頑張ってみます!

やちさま、ごゆっくりおやすみなさいませ!

ハイタ〜〜ッチ!パチン!!

[やち] 03-15 22:57 削除
毎度お待たせしてすみませんナギ先輩続きを更新いたしました
ムーン様、私の間違いを迅速に修正して頂きありがとうございましたいや〜私も※に投稿したと気づいた時フリーズしてしまいましたよ

ナギ先輩…このままだと卒業できるのかしら〜
リアルではあと少しで卒業式から入学式へ移行するところ…
私の遅筆さゆえですが2次元だから少し引き延ばしても許していただけますかねそんなの駄目
オゥ

[やち] 03-15 23:09 削除
ムーン様コメントありがとうございます
ミュミュちゃん名犬ならぬ名猫です
緊張感ありましたか〜
なかなか苦手な表現でしたのでそう言って頂けると嬉しいです

あの方は…うふふムーン様の続き楽しみにお待ちしています

[かおる] 03-16 10:14 削除
おぉぉぉ!
何と緊迫した雰囲気!!
これ、映像にしてみたいと思ってしまいました!
外で警察が待機してるし、
これからどうなっちゃうんでしょう!

あれ?
あともう少しで卒業ですよね?
捕まっちゃったら卒業できないじゃないですか!?
いや、きっと、感動の卒業式が待っているはず・・・!?
ふふふ・・・
楽しみだわ〜

いつもお忙しいのにありがとうございます。
楽しいお話、読ませていただいて感謝感謝です。

[ココア] 03-16 13:02 削除
やち様〜、すごいです!
も〜ドキドキはらはら…

緊迫感がすんごい伝わってきて、ほんと映像化して欲しいです!
読んでて映像がうかびました!

そして、束の間の抱擁を許されたナギさんとなっちゃん…
必死になってなっちゃんを守ろうとするナギさん、素敵です(//∇//)
強くて優しくて…
あ〜んやっぱりナギさん大好き〜(*≧∀≦*)
このシーンにキュンキュンしました

ミュミュちゃん!
グッジョブですね!o(*⌒O⌒)b

あ〜ん、二人が無事に救出されますように!
そしてナギ先輩が無事に卒業できますように!

やち様、ムーン様、お忙しいのにいつも素敵なお話ありがとうございます!

[やち] 03-17 09:01 削除
ムーン様、皆様いつもやる気スイッチ・オンするようなコメントありがとうございます

かおる様映像化…いいですね私も動くナギ先輩が見てみたい私の脳内では常に動いてくれてるんだけどな
そ、卒業式…うん、無事に卒業させてあげたいです
いつもお優しい言葉をありがとうございます

ココア様ドキドキハラハラして頂けましたか束の間の抱擁にキュンキュンして頂いてありがとうございます私も強くて優しいナギさん大好きです
彼目線のストーリーがかなりキュンキュンしたので当初抱擁もなかったのですが…書き変えちゃった
いつも可愛いコメントありがとうございます

前へ|次へ

コメントを書く
日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ