ナギ先輩

□ナギ先輩
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[ムーン]

終業のチャイムとともに部室へダッシュしてジャージに着替えると体育館へと急いだ

何故って、それは今日は引退した3年のナギ先輩が練習を見に来てくれる日だから

体育館の中二階が卓球部の練習場だ

『よし!一番のり!』

卓球台を設営するためガラガラと運んでいるとフッと重さがなくなった

『?』

上を向くとナギ先輩が一緒に押してくれてる

『!ナギ先輩!いいです!これは一年の仕事です!』

ナギ先輩は表情を変えずに私を見下ろすと

『ばーか、お前はいつも頑張りすぎんだよ

 たまには人を頼れ』

先輩、私の事見ててくれたの?

真っ赤になって見上げる私に先輩はふっと微笑んだ


[やち] 09-14 10:24

ナギ先輩と私は並んで素振りをしていた。
先輩のキレイなフォームと違って、私のフォームは、どこかぎこちない。

『違う、そうじゃない、こうだ』

『チッ…しょうがねえな』

ナギ先輩は背後に回り、私の手をとった

(…えっ、先輩と手が…。体も…どうしよう、集中なんかできないよ)

優しくフォームを直してくれる先輩

(先輩は…何とも思わないのかな)

『分かったか?』

先輩の低い声が後頭部から響き、その吐息を感じて思わず身体がゾクリと反応してしまう。

『お前、何かたまってんだ?』

『…ふっ。顔、真っ赤だぞ。ゆでダコみてぇ。』

[ムーン] 09-14 13:38 削除

「ええっ?!」

慌てる私の頬にヒヤリと冷たい感触が走る

「キャッ」

「…ちゃんと水分補給しろよ」

頬に当てられたのはナギ先輩がいつも使ってるドリンクボトル

「え…?これって?」

「いいから飲めよ」

「は…はい」

ドキドキしながらストローに口をつける

「ん…んん!美味しい〜!」

ナギ先輩はそんな私の反応に満足したかのように微笑むと

「レモンとハチミツをベースにした自家製のスポーツドリンクだ」

「え!ナギ先輩が作ったんですか!?」

ナギ先輩は頷きながらボトルを受け取るとストローに口をつけた

(え?それって間接キス?!)

目を丸くしながらナギ先輩を見つめる私に先輩は
「うん、美味ぇな」と言いながらニカッと笑った


[やち] 09-14 17:50 削除

(あ…ナギ先輩の笑顔って初めてみたかも。可愛いな)

先輩の笑顔に見とれていると、下校を知らせるチャイムがなった。

「もう、皆帰っちまったな。んじゃ、お前も早く帰れよ。じゃあな」

「あっ…お疲れ様でした」

(先輩、帰っちゃった。一緒に帰りたかったな…)

1人、とぼとぼと校門を出ようとした時、誰かに呼び止められて振り返った。

校内では有名なチャラ男グループだ。
(ヤバい、どうしよう)
『君ぃ〜これから帰んの〜?俺らとどっか遊び行かない?』
『い〜じゃん。行こうよ』

必死に抵抗するけど
無理矢理連れていかれそうになる。

「離してくださいっ」
大声で叫んだ…その時、ザザーッという音がして、砂埃が舞う。

「お前ら何やってんだ。そいつを離せっ」
(ナギ先輩っ!)

そこには自転車に乗ったナギ先輩がいた。
「こいつは、うちの大事な部員だ。その手を離せ」
そう言って先輩はチャラ男達を睨み付けた。

『あ?誰に言ってんの…お、お前は三年のナギ!』
『うわっヤバ…逃げろ』

チャラ男達が去っていくと、ホッとしたのか全身の力が抜けていく。

「大丈夫か?…悪かったな。俺が遅くまで付き合わせちまったせいで」
「立てるか?」
そう言って優しく手を引いてくれる。

「あのっ、助けてくださってありがとうございました」

「…乗れ」

「…えっ?」

「…いいから後ろ乗れ。家まで送って行く。
…ったく、これ以上心配させんな」
そう言う先輩の顔が赤いのは気のせいかな?

「お…お願いします」
私は遠慮がちに自転車の後ろに乗った。
先輩の大きな背中が目の前にあってドキドキが止まらない。

(きっと今、顔が真っ赤だ。)

「ちゃんと捕まってろよ」

オレンジ色の光が射す中、ナギ先輩は軽やかに自転車をこぎだした。

[ムーン]

「す…すいませんナギ先輩」

「あ?なにまだ謝ってんだ…

俺とお前ん家と近ぇだろ

ついでだ」


「あ…ナギ先輩のお家ってたしか「シリウス工業」って…」


「ああ、あのボロイ町工場が俺ん家だ」


「いえ!そんな!

…あの…ナギ先輩、進学されないって本当ですか?」


「…っ、おま…なんでそれを」


「ナギ先輩の実力があれば勉強でも卓球ででも好きな大学に行けるのに…実業団からも誘われてましたよね…」


「………

…俺は親父のあの町工場を継ぐ事にした」


「えぇ?!
…そんな!勿体ないです!」

驚いて思わず出てしまった失言にハッと思わず両手で口を塞いだ

ナギ先輩は一瞬厳しい表情で私を振り向いたが

「なんだよ?勿体ねぇって」て言いながらカハッて笑った

「…す…すいません」

ナギ先輩は無言で自転車を漕ぎながらチラリと私を見た

「…で?」

「はい?」

「お前は卒業したら進学すんだろ?
…特進コース受けてたし」

「…えっ?!なんでそれを?」

「…っ、まあ…なんだ、たまたま見た掲示板にお前の名前見つけたからな」

「そ…そうですか」

私はナギ先輩はY大に進学すると思い込んでいたのでニ学期から特進コースを選択し勉強もかなり頑張っていたのだ

ナギ先輩は進学しない…勉強の目標を失いガックリと力が抜ける気がした

「…Y大、行くのか?」

「………」

「…東京に行っちまうんだな」

「………」

「…おい?」

「………」

「なんだよ、黙ってねーでなんか言えよ!」

振り向いたナギ先輩は私の顔を見てびっくりしたように自転車を止めた

キッキー …ジャッ…

「………

お前…なに泣いてんだよ」


[やち] 09-15 16:58 削除

ナギside

(…っくそ。こんな時どうすりゃいいんだ。わかんねぇ。)

「…どうした?
お前が泣くのを見ると俺も…苦しくなる」

頭をクシャクシャと撫でてやると、ようやくなつは顔をあげた。

「わ、私、Y大には行きません」

「あ?何言って…」

「…だって、Y大にしようって決めた理由は…ナギ先輩だから」
そう言い放ったなつの頬は紅潮し、瞳は涙でキラキラと光っていた。
(…っヤベぇ。すっげ可愛い///)

「…なつ」

気が付くと俺はなつを腕の中に閉じ込めていた。
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