SIN→NAGI【BL?!】

□蜃気楼
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シン目線です…

*****


…ッドッカーーン!



(!!)


まだ夜の明けきらぬ冬の朝方…


突然の大砲の音に飛び起きたシンは


その後地響きの様に揺れる動く船室で


転がり落ちるようにベッドから下りた


(クッ…敵襲か!?)


…その手には既に銃が握られていた


キャビネットから銃弾の箱を取り出すと素早くポケットに仕舞う


もう一度ギュッと両手で銃を握り締めると…


逸る気持ちを抑えるながら全速力で甲板へ向かって走り出した



…バアンッ!


一呼吸おいて甲板の扉を思い切り開ける



白みはじめた空に硝煙の臭いと煙が立ち込めていると思った瞬間…


「ウオリャ〜!!」


真上から剣を振りかざした男が雄叫びを上げながら降ってきた



(…殺られる!)



ヒュンッ!

空気を切る音が耳を掠めたと思った

その直後

ドッ!

鈍い音を立てて鎖鎌が壁に突き刺さった


男の肩からは真っ赤な鮮血が勢いよく吹き出し…そのまま後ろにドンッと倒れる


生温かい反り血がシン頬を濡らした


ナギ「バカヤロー!急に飛び出して来るんじゃねー!」



声がした方向に目をやると白く煙る甲板の向こうでナギの影がユラリと動いた


肌を刺す冷たい冷気のなかナギの身体からは白い蒸気がユラユラと蜃気楼の様に立ち上り…


その瞳には冷ややかな青白い焔が静かに燃えていた…


…ゾクリ…


…その姿に背筋に冷たいものが走る…



ナギは駆け寄りながら壁の鎖鎌をガッと抜く



その隙に背後から襲ってきた短剣の男をナギは振り向きもせずに肘で男の鼻をへし折った


ガッ

「ぐおっ!」



ナギ「真っ青だぞ…シン…怖いか?」


『…いや』

俺は首を振る


怖いのは敵でも…ましてやナギでもない…


俺が恐ろしかったのは…
殺気を放ちながら戦うナギの姿を美しいと感じてしまった自分自身だ…


時折、蜃気楼の様に現れては消えるナギに対するこの奇妙な感情…

永遠に消えくれとシンは思う…




ナギ「船首のほうがヤバイ…いくぞ!」



俺に背中を向けて一言告げるとナギは鎖鎌を構えたまま猛然と走り出した



ヒュンッ


「ぐおっ!」


ビュッ


「わああ!」


ナギの鎖鎌が唸る度に男達が次々と倒れてゆく…



パンッ


パンッ



俺は銃で援護しながらナギの背中を追った…


苦痛に泣き叫びながらのたうち回る男達の顔…


甲板に流れるどろりとした鮮血の海…


…すべての動きがゆっくりとスローモーションの様に見える…



もう一人の俺が俯瞰で俺を見つめている気がした…



END
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