長編2
□2.お前の性癖に興味はない
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「ルーク、本当にボクのことが好きなら、これをつけてくれ」
「ルーク、俺のことが好きならこれをつけろ」
今日も今日とてルークルークルーク。
いい加減にこいつら飽きてくれないかな…と、ルークは盛大にため息を吐いた。
それも、今日は名前を呼ぶだけでは飽き足らず、手に何かを持っている。そんなルークを辟易させる二人が手にしているものを見て、ルークは頭痛がしてきそうだった。
何処か吐き気もする気がする…。
何をつけろって言うのか、まさかそれをつけろと言うのか?
ルークは会話をする気さえ失せて、二人から視線をそらす。
「ルーク、君のために特注で作らせたんだ。」
見てくれと言わんばかりに“それ”の説明をするフレン。このデザインと色を君の服の色に合わせてみただのほざいている気がするが、その声をルークは完全に遮断した。正直聞きたくもない。
「なにいってんだよフレン、こっちの方が似合うんだよ、ルークは。」
そう言って今度は対抗するようにユーリが自分の手にある“それ”の説明をする。ユーリが説明する真っ黒なそれは、ユーリの服の色調と同じで、説明を聞かなくてもなんでそんな色をしているのか解ってしまったルークはこの場から早々に立ち去らなかった事を後悔した。
そして、説明を聞かなくても解ってしまうくらいこいつらに毒されているのだと、そんな自分に心からがっかりした。
「とりあえず、俺お前らの事嫌いだから。」
一思いにそう言ったルーク。
けれど口にした後で、さすがに傷ついたかな…、と若干の罪悪感を感じながら二人の様子を覗う。
が。
当の二人はルークに笑顔を向けてきた。
フレンがこれでもかと言うほど爽やかな笑みを浮かべていれば、ユーリはゾッとするような厭味ったらしい笑顔。
「本当にルークは照れ屋さんだなぁ。」
「ツンデレも可愛いけどな、偶には素直に俺のところに来ていいんだぜ?」
あぁ、こいつら、本当に言葉が通じていない。
きっと違う言語で喋っているのだろう。
だからこいつらの言ってることが理解できないし、自分の言っていることが伝わらないんだ。そうだ、そうに違いない。どうかそうであってくれ。
「君が僕の事を好きなのは当たり前の事だったね、わざわざ確認した僕が間違っていたよ。どうか気を悪くしないでくれ。」
「お前が俺の事を嫌いなわけねーもんな。悪かったよ。でもそんな俺からのプレゼント、断るわけないよな。」
謝っているのかいないのか。
その判断が受け取り手に任せられるのならば、謝られている気などこれっぽっちもしないその言葉に、ルークの口端がヒクヒクと引きつった。
あぁ、ダメかな。言葉も通じないなら、いっそ喋れないように黙らせてしまうのは、許されないことなのだろうか。でもそうしなければ、自分は何処かおかしくなってしまいそうだ。
けれどルークの思考を都合の良いように汲み取る二人は、勝手に進めていく。
「ちょっ!や、やめろ!!」
抵抗するルークもなんのその、ルークの白い首筋に、二人の手にある“それ”があてがわれる。
「ほら、やっぱりルークには白が似合う。」
「何言ってんだ、白い首だからこそ、この真っ黒の首輪が似合うんだよ。」
「どっちも似合いたくねーよ!!」
けれど叫びながら抵抗するルークの言葉は、二人には完全に聞こえてい無いようだ。まだ首にあてられただけだが、このままでは本当に装着されてしまう。
「白い首輪をつけたルークを鎖につないだ様は、きっととっても綺麗だろうね。」
「服を全部取っ払って、鎖をつないだ首輪だけをつけさせて……鎖はずっと俺が握っててやるからな、ルーク。」
恍惚とする二人の表情に、ルークは背筋が凍った。
そんなの絶対に嫌だ!
ルークはこれでもかと言うくらい暴れて、二人の拘束から逃げ出す。
「ルーク!」
あまりにも激しい抵抗に思わず手を離してしまった二人は、すぐに再びルークを拘束しようと手を伸ばすものの、時すでに遅く。
ルークは近くにあったロイドたちの部屋に立て込んでしまった。
そして大声で叫ぶ。
「……俺は、お前らの性癖に興味はねーんだよ!!」
何回言えば通じるのか。
そんなルークの叫びを聞いても、ドアを叩いてルークルークと叫ぶ二人。
もうそろそろ、ユーリたちに伝わる言語でも勉強しなくちゃダメかな…なんて、遠い目をしながらルークは途方に暮れるのだった。