頂き物

□恋心
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その姿を見ると、胸が高鳴るのは何故だろう。
突然やってきた漆黒の彼。
気付けば毎回彼の姿を追っていた。

彼はいつも桃色の髪をした可愛らしい子と一緒にいる。
彼曰く、護衛しているだけとのことだが、エステルの彼への表情は、恋する乙女のようで。
そんなユーリもエステルには柔らかい笑みを浮かべる。
自身と会う前から知り合っている彼らには近寄りがたかった。

報われない恋、なのかと。
自身も男で、恋する相手も男。
唯一このことを知っているアニスには、そんなん関係ないと言われていたが。
やはり感じるのは大きな壁だった。


「だったら、既成事実でも作っちゃえばぁ?」

毎度のようにアニスに相談しに来たルークだったが。
一発目にこの言葉はキツい。

「き、既成事実…って!アニス!」

「じれったいんだっつーの!ルークは自分が思ってるより皆にも慕われてるんだし?」

「そ、そんなこと」

ちょっとしたことで卑屈になる彼にやれやれ、と呆れ顔をする。

「じゃ、本人に好きな人いるか聞けばいーじゃん。簡単でしょ?」

「そ、そんなこと…」

うだうだしているルークに痺れを切らしたのか、ルークの服の裾を引っ張って自室を出た。



「ちょ、アニス!どこにいくんだよ」

無言のアニスに引っ張られるルークは、わけもわからずアニスに問うが、返答はない。
だが、向かっている先は恐らくユーリのところなのだろうと想像がついた。
だが、その用途が全くわからないルークは困惑しながらもアニスに付いていった。

「ユーリ!」

案の定ユーリ達のいるところへ連れて来られたらしい。
目の前には愛しい彼と、エステル。

(やっぱり、この二人…)

嫌な思いばかりが胸に過る。
これは嫉妬だ。
ルーク自身も、その事は自覚していた。
エステルの顔を見ることが出来ないのがなによりの証拠。
きょとんとルーク達を見る二人から顔を背けた。

「ちょっと、ルーク。しっかりしなさいよ」

「だ、だってアニス…」

たじたじしているルークに、アニスは頭をがしがしと掻きながらエステルの方を向いた。

「ねぇ、エステル。ルークがユーリに用があるみたいだからあたしたちあっちに行ってよ」

「あ、そうなんです?わかりました」

アニスがエステルの手を引き、その場を離れた。
それに慌ててルークがアニスを追い掛けようとしたが。

「おいおい、俺に話があんじゃねぇの?」

肩を捕まれその言葉を投げ掛けられた。
うぅ、とうなだれた声を出しながらユーリの方を向く。
普段から気に掛かっている相手が目の前で、しかも二人きりな状態にルークの心臓はすでに破裂寸前だった。
アニスを恨みたい気持ちと、感謝の気持ちが混合し、頭の中はパニック状態であり。

「なんだよ?」

「あ、え、あ、うん。あっ、と…」

言葉にならない言葉を発してしまうのだった。
ルークがあたふたしていると、次第にユーリが苦笑しはじめた。

「そういや、最近お前とこう面と向かって話したことなかったよな」

ユーリはそういいながらルークの頭をぽんぽんと撫でる。

「こ、子供扱いすんなよなっ!」

「あぁ、悪い悪い。折角だし、討伐にでも行くか?」

「え…?」

きょとんとするルークにユーリはニヤリと笑う。

「たまにはいいだろ。話は気が向いたときに話せばいいしな」

「ユーリ…」

ルークの手を取り、「それじゃ行きましょうか、お坊ちゃま」というユーリに、ルークの顔が熱くなるのを感じた。
彼の気持ちもわからず、自身の気持ちも伝えることは出来ていないが、一歩進んだことが嬉しかったため、今はこのままでもいいと思ったルークだった。






「なーにあれ中途半端!」

「まさかルークがユーリの事好きだなんて知りませんでした。相思相愛なんですね」

「え?なにそれ」

「ユーリも知らずのうちにルークを気にしているってことです」



-END-



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