わけあり少女とわけあり少年

□第17話
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「・・・すみません先輩。
こんなことに巻き込んでしまって・・・」
「・・・」
「せ、先輩!寝ないで下さい!!」

ゆさゆさと先輩の体を揺するとハッと目が開いた。
どうやら先輩は立ったまま寝てたみたい。
す、凄い・・・。

「ん〜・・・ごめんごめん。
で、あのクソガキを殴ってくればよかったんだっけ?」
「ぜ、全然違いますっ!」

くぁぁあ、と大きな欠伸をした先輩は首をゴキゴキと鳴らした。
お、男らしい・・・。

「えっと、木暮君からボールを奪われないように少し相手をしてほしいんです」
「・・・んー」
「え、えっと、手加減してあげてくださいね?」
「・・・・・・・・・・・うん」

し、心配・・・。
たぶん先輩は手加減する気全く無い。

先輩が小暮君のもとに歩き出す。
小暮君の声が先輩に届くところまで来たところで、

「へっ、どんな凄い奴がくると思ったら女じゃねぇか。
お前なんかに負けるかよ」
「・・・うるさい」

小暮君、完璧に昨日先輩に蹴られたこと忘れてる!?

先輩がボールを足で抑えてボーと小暮君を見る。
よし、二人とも準備できたみたい。

「いいわよ!」

小暮君に声をかけると、ダッと飛び出した。

「っわ」

は、早い。
それに自分の背の低さを存分に利用してる。

「俺の勝ちだっ!」
「・・・ふぁ・・・」

小暮君がボールへと足をぶつける瞬間、先輩が欠伸一つで軽く交わした。

「「え」」

あ、あれ?
小暮君が繰り出した蹴りは、素人そのもののものだった。
先輩も少し眉を寄せて転んだ小暮君を見ている。

「も、もう一回だ!」



「もう一回!!」


「〜〜もう一回っ!」


「もーうーいっかーい!!!」


「叫ぶな」

先輩が、転んで地面に転がっていた小暮君に向かってボールを飛ばした。
朝は機嫌が悪いみたいですね・・・。



2時間後、少し休憩をとっていた先輩が不意に口を開いた。

「あいつ、うるさいけど凄い」
「え?」
「まったくスピードが落ちてない。
もう2時間もやってんのに・・・。
それに、あの動き。
たぶん私はできない」

それにしても、と先輩が続ける。

「さっさと諦めてくんないかなー、疲れた」
「あ、はは・・・」

「いつまで休憩してんだよババア!!
早くしろ――――!!!」

「誰がババアだボケッ!!」

一瞬のうちに小暮君のところまで走っていった先輩は、そのままの勢いでドロップキックをした。
す、凄い!!

「てぇー!!
なにすんだよ!」
「あぁ?一回逝っとくかお前」
「ででででで!!!」

遠くで先輩が小暮君の頭をギリギリと握り締めているのが見える。
先輩にあんな口がきけるのは、あの子ぐらいだと思う。
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