エトセトラ

□嘘の終わり
1ページ/5ページ


最近塾を通じて仲良くなった出雲ちゃんとおしゃべりなーう。
出雲ちゃん可愛いから目の保養になる。
特に感情豊かに動く眉毛が可愛いよね!
出雲ちゃんにそれを言うと気にくわないって顔をするけどそれも可愛い!

「あんたって本当あいつに似てるわね」

出雲ちゃんが呆れながら私に言う。
あいつ?
首を傾げていると出雲ちゃんは私の髪の毛を高く結い上げながら呟いた。

「志摩よ」
「…あっはっはっはっ、うげろろっぴー」
「何語よ」

出雲ちゃんの口から出てきたのは私の天敵である志摩廉造の名前。
あいつ誰彼構わずに声かけるって有名だけど私には一切関わってこないからね。
別に私も出雲ちゃんを口説くやからなんぞに声をかけられたくはないけど、そんなに私の顔ひどいかったのか、と高校に入って早々に落ち込まされた。
だから志摩廉造はきらい。

「やだ、出雲ちゃん。
いくら出雲ちゃんでも言ってもいいことと、悪いことがあるのよ?」
「私もだけど、あんたも相当志摩嫌いよね。
はい、できた」

普通の体育のあと、私の髪があまりにもボサボサだったらしく、出雲ちゃん自ら志願してやってくれた。
そこらかしこに跳ねていた髪の毛は頭の頂点でお団子になっている。
鏡で見てみても完璧なる出来映えだ。

「出雲ちゃんすごい!」
「ふん、これくらい当然よ」

出雲ちゃんは赤くなった顔を隠すようにそっぽを向いた。
ツンデレおいしいです。

「さ、行くわよ」
「あー…これから塾かぁ」
「祓魔師になるためだし、我慢しなさい」
「ふぁーい…」

欠伸まじりに返事をすると、出雲ちゃんに頬をつねられた。
いたいいたいいたいいたい!


鍵を使って教室に入ると、もうほとんどの人が座っていた。
いないのはしえみちゃんと山田くんかな。
出雲ちゃんに引っ付きながら後ろの席に向かって歩いていると、奥村くんが不意に顔をあげた。

「魔法いつもと髪型ちげーな」
「出雲ちゃんがやってくれたんだー。
似合う?」
「おう!
眉毛器用だな」
「眉毛って言うな!」

出雲ちゃんがプリプリと怒ってしまい早歩きになる。
あぁまって、と追いかけた。

「ほんっと失礼な奴…!」
「でもいい人だよー奥村くん。
一応出雲ちゃんのこと器用って誉めてたし」
「ふん、当然よ」

自信家な出雲ちゃん、てらかわゆしかり!
にやにやとしているとまた頬をつねられた。
いたい!

「魔法の髪、神木がやったんか?」

出雲ちゃんといちゃついていると京都三人組が近くに寄ってきた。
勝呂くんが感心してるような顔で出雲ちゃんを見る。

「そうだよー。
出雲ちゃんすごいでしょ!」
「ほんまやなぁ。
よう似合ってはりますよ」
「子猫くんありがとー」
「ふ、ふんっ」

出雲ちゃんが顔を赤くしてそっぽを向く。
もはや彼女にとってこれは羞恥プレイほかならないことだろう。

「志摩さんもそう思いますよね?」

子猫くんが京都弁独特の訛りを交えながら志摩廉造に話をふる。
志摩廉造はといえば、なにやらぼうっとしてどこを見ているのか分からない顔をしている。
勝呂くんも違和感を感じたのか志摩?と声をかけながら肩をたたく。
すると志摩廉造は大げさなほどにビクリと肩を揺らして視線を斜め下にずらした。

「…魔法さんには、似合わないとちゃいます?その髪型」
「は、」

出雲ちゃんによって上げられたテンションがみるみると降下していくのを感じた。
見ると私だけではなく志摩廉造の声が聞こえる範囲にいる人全員が固まっていた。
節操なしの志摩廉造が女子に対してそんなことを言うなんて!
という副音声が聞こえるようだ、あっはー。

「……やっぱり私、あんたのこと嫌いだわ」

今私絶対無表情だわ。
あー恥ずかしいー。
心の中でお茶らけながら席を立つ。

「出雲ちゃん、お腹痛くなったから今日の塾は休むね?」
「…え、えぇ。
お大事に」

出雲ちゃんにいつものように笑いかけて早歩きで教室から出た。








.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ