嫌われ

□ たとえば僕が
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頭がガンガンする。
やめた方がいい、弱い私が言う。
正直私もこのまま誰にも会わずにどこかへ遠くに引っ越したい、とか思う。
でも逃げているだけじゃダメだ。
私はもう一度心から笑いたい。


「不動くん」

約束した時間ピッタリに不動くんは来た。
普段着に着替え、車椅子に乗っている私に近づいてくる。

「よぉ、調子は?」
「いいとは言えないかな」

ガクガクと今から震える手を見て苦笑する。
不動くんは気づいてくれたのか手を握ってくれた。

「大丈夫だ」
「うん、不動くんがいるなら大丈夫な気がする」
「なんだそれ」

くつくつと独特な笑い方をする不動くん。
私は軽く息を吸い、よし、と小さく呟いた。

「…いこう」
「あぁ」



病院から雷門への道のりは近い。
結局手の震えは収まらなかった。

「不動くん」
「あ?」
「、怖い」
「…」
「怖いよ…不動くん」

校門の前で止まってしまう。
手の震えが収まらない。
そんなみっともない私の手を不動くんはまた握ってくれた。
行くぞ、と芯の通った声で言った不動くんに車椅子を押してもらい、校門をくぐり抜けた。

お互い無言でグランドまでたどり着いた。
グランドには声は張り上げているもの笑わずに練習をしているみんな。

「…私が、笑顔奪っちゃったのかな」
「……逆だろ」

不動くんは憎々しげに漏らし、車椅子を押した。
一番早くに気づいたのは円堂くんだった。
目を見開き、顔を輝かせて叫ぶ。

「っ*!?」

円堂くんの声に全員が動きを止める。
まさか、とした顔でこっちを向き、それぞれ顔を歪める。
円堂くんがこちらに全力で走りより、心配そうに私の前でしゃがんだ。

「*、もう体は大丈夫なのか?」
「…万全とは言えないけど、それなりに」
「そうか。
*、あのな、」
「円堂くん」

まだなにか話したげにしている円堂くんの言葉を遮り、口を開いた。

「みんな、部室に集めてもらってもいいかな」

円堂くんは神妙な面持ちで頷いた。




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