嫌われ

□ 君はいつまで経っても美しい
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鬼道が出て行ったあと、部室は無音のままだった。
だがすぐに円堂が立ち上がる音で部室に音が戻った。

「俺も…*を探してくる!」
「っ俺も行く」
「僕も」

円堂に続いて風丸と松野も立ち上がる。
一之瀬も携帯を取り出しながら立ち上がり、部室を一瞥した。
だが何も言わずにため息だけをついた。

「鬼道に連絡取ってみる」
「あぁ、行こう!」

携帯を耳に当てながら出て行った一之瀬に続いて、三人も行ってしまった。
それに続くようにマネージャー二人も駆け足で部室を出る。
誰も止めない。
また誰かが立ち上がり、部室の扉に手をかけた。
俺はその人物に目を見開く。

「染岡…!?」
「…」

全員が驚いて染岡を見る。
染岡は俺と同じくらいアイツが嫌いだったと思ってたが、何故。

「…俺、気付いたんだ。少し前に」

染岡は一瞬だけ葉月を見て、すぐにそらした。

「俺、まだあいつに謝ってねえ!」

染岡は何かを吹っ切るかのように勢いよく部室を飛び出していった。
気づいたって、なにになんだだ。

「葉月も…行かなくちゃ」

震える声で呟きながら葉月が立ち上がる。

「葉月のせいで、葉月のせいで*ちゃんが…」
「………葉月?」

いま、なんて。

葉月のせい?
じゃぁ、本当に鬼道は葉月を苛めてはいないのか?

「*ちゃんがまた死んじゃう」

また?鬼道も言っていたまたという言葉。
問い詰めようと葉月の腕を取ると、葉月は今まで見たことのないほど顔を歪め、俺を憎らしげに睨んできた。
思わず腕を掴む力を緩める。

「邪魔しないで!
あなた達なんかに*ちゃんは絶対に死なせない!!」

葉月はそう叫ぶと部室を飛び出して行った。
残された俺たちは呆然と立ち尽くしていた。
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