嫌われ

□ 君はいつまで経っても美しい
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-鬼道side-

*が急にうずくまる。
さっきの豪炎寺の蹴りが急所に当たったのか?
それにしては時間差がありすぎる。
なにか、*の雰囲気が変わる。
ぞくりと背中の産毛が逆立ち、思わず一歩後ずさってしまう。

「…ふふふ」


顔を上げた*は、にっこりと笑っていた。
幼い頃に見せた笑顔とは全く違う、笑顔。
口元が大きく弧を描き歪んでいる。
だがそれとは対照的に目元は少しも下がってはいない。

再発した。

「あのね、君たちとっても面白い」

ふふふ、と合間に笑い、スカートのポケットを探る*。
豪炎寺がびくりと肩を揺らす。

「僕がそんなくっだらないことするわけないじゃーん!

それにーやるんだったらそん浅くじゃなくて」

黄色いカッターを取り出し、カチカチと歯が出されていく。
*は変わらず笑顔で長めに歯を出したカッターをくるりと回す。
切れ味の良いそれは、*の人差し指を傷つける。
*が滲み出た血を、べろりと自分で舐めた。

「もおっと深く、ついでに喉をぶった切るよー?」

す、と*の目が細められる。
豪炎寺は呆然として言葉も出ないみたいだ。
俺は止めようと後ずさった足を前に出す。

「*、おちつ」
「はい黙れー」

言葉が遮られ、目の前にカッターの歯が出される。
短く息を呑んだ。

「いいよ、もう。

僕も*も、疲れちゃったもん。

あと少しだったのにね、残念だね。

君の頑張りを無駄にしないように


せめて思いっきりよく一発で死のうか。

ねぇ、*」

ふふふふふ、と不気味に笑うと*はふらりと部室を出て行った。
重圧感がなくなり、今度はまた別の重い空気が部室を流れる。


「…なに、今の…」

ぽつりと松野の声が漏れる。
その声にはっと意識を取り戻し、慌てて部室を飛び出そうとしたが、豪炎寺に腕を掴まれた。
その表情は困惑したままだ。

「おい、鬼道、今のは」
「っ今は説明している暇はない!
*を止めなければ…!」

ぎり、と歯を食いしばり、二年前の事件を思い出す。
血溜まりの中にいる*の姿。

「また…死ぬつもりだ…!」

漏れた言葉に豪炎寺の手の力が抜けてのが分かり、思いっきり振り払った。
しまった失言した、とも思ったがしょうがないと割り切り部室から飛び出した。
見渡しても*の姿が見当たらない。
小さく舌打ちをし、そこから駆け出す。


間に合ってくれ…!




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