嫌われ

□ 「本当」を知らない僕に、
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ぼんやりと目が覚める。
一番に飛び込んでくるクリーム色の天井。
ああ、あたしの部屋だ。
とてつもなく怠い体を起こして一息つく。
そばの小さなテーブルには書き置きと薬と水が入ったコップ。
手を伸ばして書き置きを開くときれいな有人の文字。

『20時に計ったときは38.4だった。
熱が下がるまで学校に来るな。
最後に、必ず病院に行け』
「…かたっくるしいな…」

苦笑をこぼして書き置きを放り投げた。
薬の表示を確認する。
さすが有人。食後を選ばなかった。
薬を二錠飲んでベットから這い出る。
病院、行かないと。
確か今日は行く日だ。
寝間着を着替えて財布と携帯をポケットに入れて家を出た。
なんで寝間着に着替えてるのか。
あたしも知らない。


いつもは5分くらいで着くのに15分もかかってしまった。
早めに出てきてよかった。
待合室で意識が途切れそうになるのを耐えながら呼ばれるのを待った。

「…鬼道」

一瞬で目が覚めた。
震える手を押さえながら声のした方を振り向く。
あたしが座っている椅子の近くに、昨日あたしを床に叩きつけた人が立っていた。

「半、田くん」
「…何でいんの」
「……や、別に」

視線を逸らして俯いた。
それが気に食わなかったみたいで更に近づいて、あたしの隣に座った。
なんで。
互いに無言のまま時間がすぎる。
早く、早く早く豪炎寺先生。

「なに、豪炎寺たちにやられた怪我?」

いきなり口を開いたと思ったらそれか。

「違う、熱」
「だせ」
「……うん。
半田くんは足?」
「…そうだとしたらなんだよ」
「…別に」

そこからまた無言。
まだかまだかとイライラしてくる。

「鬼道さーん、お待たせしました」

前あたしに点滴をしてくれた看護師がわざわざ迎えに来てくれた。
安心しつつ立ち上がると立ちくらみがして、思わず看護師さんにしがみついてしまった。

「鬼道さん、大丈夫ですか!?」
「や、立ちくらみなんで…。
でも気持ち悪いです」
「今日は病室で問診しましょう」
「…さーせん」

看護師さんの肩を借りながらエレベーターまで歩く。
あ、半田くん放置しちゃった。
振り向くと唖然としている半田くんが見えた。
空いてる左手で手刀をたてた。



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