嫌われ

□ 「本当」を知らない僕に、
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朝練への道を歩きながら昨日のことを思い出す。

昨日、倒れてしまった*を*の家に運んだとき違和感を覚えた。
この前行ったときは謝らなきゃ、としか思ってなくて気づかなかったけど今回は気づいた。
*の家には食べ物がなにもない。
明らかにそんなのおかしい。
一人暮らしだとそんなものなのか?とも思ったが台所は不自然なほど綺麗だし、IHクッキングヒーターには埃が被っていた。
埃が被るほど調理をしないなんてことそうそう無いだろう。
これは絶対になにかある。

*に聞こうにも今は無理だ。
そばにいる鬼道が言うには目を覚ましたり寝たりの繰り返しらしい。

大きなため息をつく。
理由は言わずもがな豪炎寺たちのこと。
土砂降りの中片付けさせるなんて…。

「よう、一ノ瀬」

後ろからいきなり肩をたたかれ、驚いて体がびくりと跳ねた。

「びっくりした、土門か」
「俺も。
ここまで驚かれるとは思ってなかったぜ」

そう言って土門が軽く笑う。
そういえば、土門は結局どっちの味方なんだろう。
昨日は傘を忘れたと言って一番に走って帰っちゃってたし。
土門、*とはそこそこ仲がよかったと思うけど。
…まぁ、仲がよかった半田があれじゃぁ誰が味方で誰が敵とか分かんないけどね。

「そういえば明後日だな」
「なにが?」
「忘れたのか?帝国と練習試合」
「……うわ」

苦笑いしながら話す土門につられて俺も顔をしかめる。
そりゃぁもう影山はいないけど帝国には嫌な思い出しかないし、やりたくないのが本音。

「それまでに気づけるといいな、豪炎寺たち」
「…土門、それって」

顔を上げて土門を見ると土門はどこか苦い顔をしていた。
唇の前に人差し指を一本立て、しぃ、と小さな声で言う。

「…そんなに俺は鈍くないぜ」

土門は近くにいる俺でさえ聞き取りにくい小さな声で言うと早足で校門を通り抜けた。
結局、土門は傍観者か。

…ずるい。



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