嫌われ

□くたびれるみたいだ
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今日は真面目に授業に出ようと思ったけど、紙くずやら消しカスやら飛んでくれば誰でも気分が萎えると思う。
結局まともに出たのは一時間目の英語だけかな。

放課後の部活の時間、回る洗濯機の音を聞きながらボトルを振る。
秋ちゃんは外でボール磨き。
水無瀬さんはというと。
ちらりと後ろを見るとパイプ椅子に座っている水無瀬さんと目が合う。
水無瀬さんは一瞬目を見開いてにこりと笑った。
すぐに目を反らして次のボトルへと取りかかる。
なんなんだ。
さっきからずっとああだ。

「ねー*ちゃん」
「…なに」
「葉月と修也たち、どっちが嫌い?」

いきなりの質問に軽く戸惑う。
ボトルに分量通りの粉をいれながら考える。
水を計ってからボトルにいれた。

「嫌いなのは水無瀬さん」
「…ふーん」
「でも憎いのは豪炎寺たち」

ボトルを振りながら言った。
横目で水無瀬さんを見てみると意外そうに目を見開いていた。

「なんで?
葉月のこと憎んでないの?」
「憎んでないとは言ってない。
豪炎寺たちの方が憎いのが大きいだけ」
「…思ったんだけどさー、嫌われるのと憎まれるの、どっちが辛いんだろうね」

最後のボトルを作り終わり、籠にいれた。

「……憎まれる方かな」
「なんで?」
「憎しみはなかなか消えないからね」

籠を一つ持ち、水無瀬さんにもう一つの籠を差し出す。
水無瀬さんはふーん、と呟いて籠を受け取った。
あたしが作ったドリンクは飲んでもらえないから水無瀬さんが二つとも持っていってもらえるといいんだけど。
流石に二つは持てないだろうと手伝う。

「ねぇ*ちゃん」
「今度はなに」
「……ううん、なんでもない」

首を振った水無瀬さんが部室から出ていく。
あたしも後をついていき、ベンチに籠をおいた。

「じゃぁ配るのよろしく」
「うん…」

なんか水無瀬さんの様子がおかしい。
違和感を覚えながら干したままのタオルを取り込みに部室へと足を進めた。
タオルを取り込んでいると後ろから足音が聞こえてきた。
誰だろうと振り向くとピンクの坊主が特徴的な染岡がたっていた。
水無瀬さんがまた何か吹き込んだんだろうか。

「……今日のドリンク、誰が作ったんだよ」

少し身構えてたあたしは呆気に取られる。
おい、と染岡に促されて慌ててあたし、と答えた。
言っても信じてもらえないことを思い出して、少し後悔した。
嘘をつくなと殴られるかな。

「………昨日と同じ味だった」
「…それが?」
「昨日、俺はお前がドリンクを作っているところを見た。
けど、葉月は昨日も今日も自分が作ったって言いやがった…!」

泣きそうな、辛そうな顔で染岡がボトルを握りしめる。

「…水無瀬さんが染岡のために作り直してくれたかもしれないじゃん」
「いつもと同じ味なんだよ!!」

いきなりの大声に身がすくんだ。
染岡が自分でも驚いたのか息を呑んでからわりぃ、と謝ってきた。

「葉月がマネージャーになる前のドリンクと、同じ味なんだよ…」
「…で…それをあたしに言って、どうしようって言うのよ染岡は」
「……謝りてぇ。
お前の話も聞かずに、酷いことしちまって本当にわる」
「やめて」
「っ」

タオルを竿から取って次々に洗濯物用の籠に入れていく。
染岡が拳を握りしめているのがチラチラと目に入る。

「あたし、相当性格悪いからさ。
許す気ないから謝っても無駄だよ。
それに別に染岡が謝る必要ないしね。
これは、あたしが勝手にやってることだから」

籠を持ってその場から離れた。
泣きそうな染岡を見てむしろざまぁみろと思ったあたしの性格は相当やばい。
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