嫌われ

□ 狭苦しくて、
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「はぁっ…!はぁ…っ」

荒れる息を必死に整える。
普段あまり動かさない体を酷使したんだ。
まぁ当たり前だな。
鍵を閉めたドアにずるずるともたれかかる。

「…辛い、なぁ…」

自嘲気味に呟いてお腹を押さえて蹲った。
威力が強かったとはいえ慣れているから大丈夫だ。
そう自分に言い聞かせた。


家に帰っても特にやることがないので部屋の片づけをすることにした。
他の人と違って片付けてくれる人はいないしね。
机の上に無造作に散らばったプリントを片付けているとカシャン、と音をたてて何かが落ちた。
気だるく思いながら見るとカッターだった。
懐かしく思いながら手に取ると途端に右手の血が熱くなる。
まるで血管の中で血が暴れているみたいだ。
なぜか息がまた荒くなる。
右手首についているリストバンドを二つとも外す。
そこには気持ち悪い痕がある。
薄いものから濃いもの。
消えかけているものからぷっくりと腫れているもの。
全部、全部全部自分でやったリスカ痕。
気持ち悪い。
カッターの刃を出して手首に当てる。
すぅ、と一息吸ってから手前に引いた。

「…つぅ…!」

痛い
赤い血が傷から流れ出る。
なにをするわけでもなくそれをずっと見る。
やがて一粒フローリングに垂れる音に正気を取り戻した。
慌ててティッシュで拭く。

あたし、何やってんだろ。

豪炎寺先生との約束破っちゃった。
しばらく呆然としながらも、ティッシュで傷口を押さえていた。
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