嫌われ

□ それでも世界は
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結局四人は練習に参加しないらしく病院に着いてきた。
あんま点滴やってるとこ見られたく無いんだけどな。
変に同情されるのも嫌だし。

「じゃ、あたし先に先生のところ行ってくるから、ここで待ってて」

三人へ振り向きながら待合室でそう言ったけど有人しかいない。
…はぁ?
慌てて辺りを見渡すと病院内にあるコンビニに行ってしまっていた。
おい。

「…俺が伝えておこう」
「よろしく…」

頭をがしがしと掻いてから問診室に向かった。


豪炎寺先生が言うには前回と変わりないようだ。
つまりはストレス溜まったまんま。
なんかもうどうでもいいや。

「ではいつもの場所で」
「うーい」

お礼を言って問診室を出る。
病室は六階。
エレベーターエレベーター。

「あ」

その前に三人を迎えに行くか。
めんどくさいなぁ。
空腹に顔をしかめながらコンビニに行くと三人はサッカー雑誌を立ち読みしていた。
本当好きだなぁ。
有人は丁度何か買って物を受け取っている。

「おーい」
「あ、来た」
「じゃあ帰るか」
「や、まだある」

はーいついてきてー。
なんか幼稚園児とお散歩してる気分になってきた。
そう口に出したらマックに頭を叩かれた。


「あ、あたしはエレベーター使うけど君たちは階段ね。
ちなみに六階まで」
「はぁ!?」

マックに信じられない!みたいな顔をされて少し笑う。

「当たり前じゃん今日練習できなかったしさ」
「…まぁ、一理あるな」
「誰が一番最初に着くか競争しようよ!」
「じゃ、階段のところで待ってるね。
はい、階段ダッシュスタート!」

…病院内を走るとふくよかな看護士さんに叱られることは言わないでおこう。
ちなみに経験済みです。はい。
首根っこ掴まれたの初めてだよ。
では、と四人に手を振ってエレベーターの↑ボタンを押す。
四人はばたばたと行ってしまった。
やっぱこういうところは中学生だよな。
競争とか勝負とか聞くとすぐ熱くなる。
あのいつもはクール(笑)で常識人(笑)な有人も走ってたし。
口角が上がるのを感じながら閉ボタンを押した。


エレベーター早し。
階段の踊り場で携帯を弄りながら思う。
電源切れ?
いや、だってここ人全くいないしいいかな、って。
いきなり携帯が取り上げられる。
またふくよかな看護師さんですか、このデブ。
心の中で悪態を吐きながら顔を上げると風丸がいる。
息はあまり乱れてなさそうだった。ちぇっ。

「返せよー」
「病院では電源を切れ」

そのまま電源ボタンを長押しされる。
ぴぎゃあ。
ま、いっか。

「風丸一番おめでとー」
「はいはい」
「賞品はあたしからのチューだよ」
「心底いらねぇ」

即答ひどい。
ふくれてると有人、一哉くん、マックの順番で来た。
スピードに順はあるけどみんな息はあまり切れてなさそうだ。
流石サッカー選手。

「何号室だ?」
「519」

有人の質問に答えてから歩きだす。
エレベーターからは結構近い。
病室を開けるとこの前の若い看護師さんがすでにいた。
早いな。

「あら、お友だち?」
「はい、まぁ」

看護師さんがそう、と小さく笑う。
可愛い。
親切にパイプ椅子を四つ出してくれた。
四人が座るのを見てからベットに横になる。
お腹へった。
アルコール消毒した腕にぷつりと点滴の針が刺さる。
有人を除いた三人が興味津々に見てきた。

「じゃぁまた一時間後にくるからね」
「うい」

点滴が刺さってない左手を振ると、看護師さんも振り返してくれた。
扉が閉まる音がやけに響いた。

「ねぇそれ痛くないの?」

マックが点滴袋を軽くつつく。
中に入っている液体が揺れた。

「痛くないよ。
試しにやってみる?」
「そういう趣味ないから遠慮しとく」
「まぁでも外れに当たると痛いよね」
「一哉くんわかってるー」

もしかして前入院でもしてたのかな。
あまりそうは見えないけど。

「そういえばなんで点滴したり病院来たりしてるの?」

マックは他人に踏み込みすぎだ。
あたしは軽く苦笑いしてからベットに背中から倒れこんだ。

「大したことじゃないよ」
「…ふぅん」

その代わり物わかりがいい。
空気は読めるみたいだ。

「そういえば帝国との練習試合っていつだっけ」
「この前言ったはずだが?」
「*が聞いてるわけないだろ」
「風丸、それ凄い失礼」

まぁ、
空気を変えよう作戦は成功みたいだ。
やっぱり本を読んだり寝るより、人と話すのがたのしいや。
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