嫌われ

□ 両手を広げて
1ページ/4ページ


そこから数日はみんないつも通り。
まだみんなには言わないつもりらしい。

放課後はなるべく早めに部活に行っていたけど、今日は生徒指導の先生に捕まった。
髪とサボりのことで。

「髪の毛なんて風丸とか染岡とかその他大勢はどうなるんすか」
「あれは認めたくないが地毛だ。
お前は完璧染めてるだろ」

死んだ魚の目をした生活指導の先生が煙草を灰皿に押しつける。
くそ、こいつにだけは言われたくない。
指導室で静かに言い争う。
隣にはマックが座っている。

「…松野、お前も授業に出ろ。
あと校舎内ではその帽子取れ」
「授業つまんないし帽子はボクのトレードマークだから」
「煙草吸ってる先生に言われたくないっす」
「そうだそうだー」

やる気なさそうにマックが茶々をいれた。
先生の額には青筋が。
先生が落ち着くためか煙草を胸ポケットから煙草を取り出す。
そのとき、マックが片目をつぶり、机のしたでドアを指差した。
これは合わせろ、というときの合図だ。
よく脱出したりイタズラするときに使う。
あたしは頭をかいた。
これは了承の意味がある。
じぃっと窓の外を見つめてから指をさした。

「…ところで先生、あんなところにキャバクラなんてあったんすね」
「なんだと!?」

先生はにやけながら窓にへばりついた。
その瞬間、マックが駆け出す。
あたしもすぐにマックと自分のバックを掴み、あとを追う。

後ろから怒鳴り声が聞こえるが無視して廊下を全力で走った。
部活に行けばこっちのもんだ。
下駄箱で靴を履き替えながらハイタッチしてグランドへと足を進めた。
二人でざまぁみろと嘲笑しながら。
我ながら嫌な生徒だ。
いや、だってさ、生徒指導の先生が煙草吸ってたりキャバクラ行ってたりしたら指導される気も失せるっつーの。
もとからないんだけどね。

「というかあいつがキャバクラ行くって知ってたんだ?」
「だって前あいつの机の見てみたら『カレン』ちゃんの名刺が隠してあったから」
「…もしかして探った?」
「人聞きの悪い。
綺麗に整理整頓してあげたの。
昼休みぐらいにね。
ちゃんと名刺もゴムも目立つところに置いてあげた」

あたしっていい生徒、とふざけて言うと、横でマックが体を震わせたので小さく笑った。
今ごろ職員会議になってんのかな。
だってあいつ全部授業入ってたし、職員室帰ってないと思う。
さっきもなにも言われなかったし。
むしら他の先生に褒められたよ!
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ