嫌われ

□みたいな君が
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洗濯物も干し終え、さて部室に戻ろうと体を反転させたら木の陰に一哉君がいるのが見えた。
あたしが手を降ると一哉君は駆け寄ってきた。
そしてあたしの前に立つと真剣な表情で口を開いた。

「……水無瀬のこと、どう思う?」

わぉ、やっぱりそれか…。
頭をがしがしと掻きながら答える。

「…んー…あまりいいイメージはないね。
秋のこと苛めようとしたし…。
たぶんただのミーハーで、ちょっと過激な子だと思う」

空になった洗濯籠を持った。
ていうか一哉君練習いかなくていいのか?

「俺…正直言って水無瀬さんにマネージャーやってほしくない」

正直者だな、一哉君。
さすが帰国子女。

「それはあたしも一緒だよ?
でもさ…今水無瀬さんを辞めさせたら秋と春奈ちゃんが苛められちゃうかもしれないし」
「それは*もだよ」
「まぁ…あたしは大丈夫だよ。
気にしないし。
…じゃぁそういうことだから、練習頑張って」

籠をブラブラと振りながら反対の手で一哉君に手を振った。
部室に入ると水無瀬さんはゆっくりとした手付きでボトルを振っている。
たぶんなるべく仕事量減らしたいんだな、たぶん。
春奈ちゃんは水無瀬さんが先輩だからかな。
チラチラと見ながらも何も言わないで作業をしている。
秋ちゃんは箒を片手に部室の掃除をしていた。
流石に三人だとシンク狭いか。

「洗濯物干し終えたけどなにか手伝うことある?」

落ちていた守君の靴下をロッカーにぶちこんでから言う。
春奈ちゃんがボトルを振りながら「ドリンクは大丈夫です!」と元気よく返事をしてくれた。
じゃぁ部室の掃除手伝おっと…。

「掃除、手伝うねー」
「あっ、ありがとう」

にこりと微笑んだ秋ちゃんは箒を置き、換気をするために窓を開けた。
流石に冬に窓を開けると肌寒いな…。
ぽいぽいと壁山君が食べ散らかした菓子袋を燃えるゴミ燃えないゴミとわけていく。
一日にどんだけ食ってんのこの人。
黙々と掃除をしていると、部室の扉が開いた。
全員が顔を向ける。

「あ、有人」
「すまない、生徒会で遅く、なった…」

有人が水無瀬さんをガン見している。
は?みたいな感じで。
水無瀬さんはきょとん、としている。
ゴミ袋を端っこに置いて有人の手を引っ張って部室から出た。
しっかりと扉を閉める。

「おい、あれは」
「水無瀬葉月さん。転校生で同じクラス」
「…あぁ、マネージャー志望のやつか」
「うん。あぁ、あたしは断ったよ?
でも部室に直接水無瀬さんが来て、頼んだら守君が許可しちゃって…」

どうしよう、と言うと有人は顎に指を当てて考え込む。

「…入ってしまったものはしょうがない。
やってもらうしかないだろう」
「うん。
でさ、あの」

秋ちゃんを苛めていたことを言おうとしたときに

「*ちゃん」

と、水無瀬さんの声に遮られた。
水無瀬さんはにっこりと笑うとグランドを指差した。

「休憩だって。
ドリンク運ぶの手伝ってくれるかなぁ?」
「あ…うん」

あとで、と有人にジェスチャーして部室に入った。
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