嫌われ
□羨ましくて
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かさ
授業中、手紙が回ってきた。
送り主は隣の風丸。
風丸から手紙が回ってきたの初めてで少し戸惑いながら手紙を開く。
当の本人を見てみると黒板に書かれた計算問題を解いている。
手紙には『水無瀬について鬼道はなんて言っていた?』と書いてあった。
そんなに気になるんだ。
私は『有人は水無瀬さんが入ると多すぎるから断れって』と書いて折りたたみ、先生が黒板に向いた瞬間風丸の机の上に手紙を軽く投げた。
上手く乗ってくれてホッとする。
とん、と後ろから肩を叩かれ、驚いてもれそうになった声をなんとか押さえる。
あっぶな。
「*ちゃん、葉月ここわかんないんだけどぉ、*ちゃんわかる?」
こそ、と耳打ちされて顔だけ後ろに向ける。
ノートには丸っこい字が沢山書いてあった。
"144を因数分解せよ"
この問題なら私は解けている。
「たぶん±12、かな」
「え?√はいらないの?」
「12×12は144でしょ?
ということは12の二乗ってことで、答えは±12、なんだけど…」
マックとか染岡にも言われたけど私説明下手だわ。
一応有人ぐらい出来るんだけどなぁ…。
有人を基準にしちゃいけないのかな。
「わかったぁ。ありがとぉ」
にこ、と水無瀬さんが笑ったので私も笑い返して前に向き直した。
うーん、いい子なんだけどな。
目がね…見下してるんだよね。
あと香水と化粧さえしなければ…。
いや別に香水とか化粧を否定してる訳じゃないんだけど!
でも度ってものがあるじゃないか。うん。
むやみやたらに振りかけるのはよくないと思うよ。
かさ、とまた私の机の上に手紙が乗る。
また風丸からだ。
開くと『今日の放課後何か言われてもダッシュで部活に行け』とのこと。
命令形?
それに言われなくても走るよ。
ハッキリとは断れない。
あぁイライラする。
チャイムが鳴って今日全ての授業が終わったことを知らせる。
私はチャイムが鳴り終わらないうちに教室をでた。
水無瀬さんの「あ」という声が聞こえたが知らない振りをした。
校舎を出て後ろを見ても当たり前だけど水無瀬さんはいない。
何となくほぅ、とため息をつき、ゆっくりと歩き出した。
後ろからたったっ、と走る音が聞こえてきて、まさかと思いつつ振り向くと
「お、早いな*!」
「守くんか…よかった」
「?」
首を傾げるのはキャプテン守くん。
やだもうあたし水無瀬さん恐怖症。