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最近やたらと仁王くんが構ってくる気がする。
私が自意識過剰のせいとか、気のせいとかかもしれないけど。
ちょっと前なんて教科書貸してもらっただけなのに舌打ちまでされたのに。
あのときは怖い、というより何だこいつは、という憤慨の気持ちの方が大きかった。
その勢いのまま屋上でぐぁーっと言っちゃったんだけどね!
その次の日には挨拶されて、古典でぬるぬる喋って、そしてその次の日の今日には食べ物をくれた。
いきなり机の上に飴が転がったから驚いた。

「へ、」
「イチゴ、嫌いか?」
「うん、あんまり…」
「そこは普通否定するとこナリ」

仁王くんは我が儘じゃのー、何なら食う?と言いながら飴の袋を探った。
私は困惑しながらマスカット、と答えた。

「ほい」
「え、これ桃だに?」
「我が儘夕映チャンにはこれで十分じゃ」
「…ありがとう」

若干眉を寄せながらお礼を言うと眉間を指で押された。
仁王くんの指は冷たくて小さくひっ、と声がでてしまった。

「つめたっ」
「冷え症なんじゃ。
それより、お礼を言うときは笑って言いんしゃい」
「そんないきなり笑えと言われても…」

そのあとも仁王くんはことごとく構ってきて、そのたびに戸惑いながらお礼を言うがどこか不服そうな顔で、自分の冷たい手を私の制服の襟のなかに突っ込んでくる。
「刑罰じゃー」と棒読みで言いながら突っ込んでくるのでどこか恐怖を感じる。

いや、それよりもなぜ、彼は、いきなり、私に構ってきたのだろう。
友達が言うには仁王雅治という人間は飄々として何を考えているか分からなく、ミステリアスで口元のホクロがえろてぃっく!な人らしい。
友達が仁王くんのファンで、鼻息荒く語ってきたので記憶に新しい。

「に、仁王くん?」
「なんじゃ?」
「なんで、私、ここに」

仁王くんの膝の上でお昼なう。
お昼になった瞬間「そんじゃ行くか」と言って手を掴まれた。
前の授業で寝ていた私は頭が回らないうちに空き教室に連れてこられ、覚醒したときにはこの状態だった。
嘘だら?
仁王くんは私の質問を熱くスルーし後ろでカロリーメイトを貪っている。
私はというと仁王くんの膝の上で石のごとく固まっている。
はずいはずいはずいはずい!
というかそれがお昼ご飯なのか、仁王くん。
不健康!

「夕映ちゃん弁当食わんの?」
「わ、たし、お弁当教室…」
「あー…取ってくるナリ」

そう言うなり仁王くんはぎゅう、と私を抱き締めた。

「う、うおお!?」

私は女子らしからぬ声を出してジタバタと仁王くんの腕の中で暴れた。
仁王くんは耳元でくすくす笑うとすぐに離してくれた。
急いで距離を取る私に待っててな、と言い残し空き教室から出ていった。
な、なんなんだ仁王くんは。
いまだにバクバクと、祭りでねりをしているみたいに心臓が暴れた。



(夕映ちゃんあーん)
(んぐっ、ま、まだ口の中入って…)
(…なら俺が食べるナリ)
(あああ私の卵焼きぃぃい…)

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