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「おい」
「・・・なんですか、涼野先輩」
ギンッと音が聞こえそうなほど夕映に睨まれる。
相当イラついているみたいだ。
「ヒ、ヒロトと何かあったのか?」
思いきって聞いてみる。
さっきからヒロトがチラチラとこちらを伺っている。
朝から正直言ってうざい。
「・・・ヒロトって誰ですか」
「え」
「私はヒロトなんて人知りません」
ふい、と###NAME2#は私の前から走り去ってしまった。
私はため息を吐く。
「いったい何をしたんだ?ヒロト」
「う、うぅぅ・・・」
案の定近くまで来ていたヒロトが、泣き声のようなうめき声のようなわけのわからない気持ち悪い声をあげる。
怨霊みたいだ。
正直言って近寄らないでほしい。
「全部声に出てるから!」
「おっと」
口を押さえてチラ、とヒロトを見ると半泣きになっていた。
「・・・で、何をしたんだ?」
「なかったことにしないでよ。
・・・実は」
ヒロトがボソボソと俯いてわけを話す。
・・・なるほど。
「それは完璧お前が悪いな」
「お、俺だって反省、してるよ・・・」
夕映に叩かれたという右頬を触るヒロト。
今だ少し腫れている。
しかし、女子に向かって生理、とストレートに言うのは最低だな。
「だから全部口に出てるって!!」
「おっと」
「だって夕映ちゃん今日変だったから冗談を混ぜて言っただけなのに・・・」
「夕映にはそういう冗談が通じないことを理解してなかったヒロトが悪いな」
「う、うぅぅぅ・・・」
ヒロトがサッカーボールを抱きしめる。
汚れていたそれを抱きしめたため、ジャージが少し汚れている。
「てゆうか風介、夕映ちゃんのこと呼び捨てにしないでよ」
「なぜお前に言われなければいけない」
ハッと鼻で笑ってリフティングをする。
ヒロトが頬を膨らませた。
女かお前は。
「誰かさんが嫌われた今、夕映を狙うには絶好のチャンスだと思うがな、私は」
トン、と軽く胸でボールをトラップする。
ヒロトは今にも発狂しそうな顔をしていた。
「お、俺」
青ざめた顔でボールを放り出したヒロトは駆け出した。
「夕映ちゃんに謝ってくるぅぅう!!!」
たっく、叫ぶな馬鹿が。
耳がキーンとした。
・・・世話のやける二人だな。