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「おはよう、夕映ちゃん!」

朝、少し寝坊してしまって慌てて家から出ると、先輩はまだ家の前にいた。
なぜホットした私。


「・・・おはようございます」

何なんだ、その目は。
私が挨拶を返すと、基山先輩は嬉しそうな困惑した表情をした。

「なんですか?」
「あ、えーと・・・いや、夕映ちゃんが俺に挨拶してくれたの初めてだから」
「・・・そうでしたっけ」

思い返してみれば、私はこの人に挨拶をしたことがない。
変な話だけども。
いつも変態とか死んでくださいとかしか言ってなかったような。

「挨拶をしてくれたということは、もしかして。
夕映ちゃん、俺のこと好きになってくれたの!?」
「・・・・」

いつものように、ふざけた言葉。
けど、それが不意にも確信を突かれたので、
思わず黙ってしまった。

「・・・そ」

ようやく口が開いたと思ったら、いつものように憎まれ口しか出なかった。

「そんなことあるわけがないです。
ついに頭沸きましたか?」

ふん、と鼻を鳴らし歩き出した私を基山先輩は追ってきてくれた。
少しだけホっとした。

「着いてこないで下さい」
「んー、俺も朝練行くから無理かな」
「違う道から行って下さい」
「夕映ちゃん夕映ちゃん」
「・・・なんですか」
「いつものマフラーは?今日は巻かないの?」

先輩に言われ、首元に手を当てると確かにいつものマフラーが無かった。
どんだけ慌ててたんだ。

「・・・慌ててたら忘れたみたいです」
「夕映ちゃん可愛いー」
「か、かわっ・・・!?」

先輩に頭を撫でられながら言われた言葉を反芻する。
ちょっと待て。落ち着け心臓。

「あれ、いつもみたいに手、払わないの?」
「き、気分です・・・」
「・・・なんか今日の夕映ちゃん変だね。何かあった?」
「別に、いつも通りです」
「あ、もしかして」

先輩が私の耳元に口を近づけた。
ビクッと肩が揺れる。



生理?



たっぷり二十秒固まり、私は息を吸った。




「最っ低ですね。


先輩、私に二度と近づかないでください」



ぱぁん!



先輩の頬を思いっきり平手で叩き、走って逃げた。




やっぱりあの人のこと好きだったなんて、気のせいだったんです

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