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「・・・ぅ・・・」

目を開くと、
真っ赤な髪と、常磐色の目がかなり近くにあった。

「あ」
「・・・」
「え、いや、夕映ちゃん。
これはちが」
「死んでください」

前髪を一束取り、思いっきり引っ張る。
何か叫んでるけど気にしない。
私の目の前にいたのはヒロト先輩だった。
何をしてたんだこの人は。

「あら、目が覚めたの?」

不意にカーテンがシャ、と音をたてて開いた。
そこには保険医の先生がいた。

「極度の緊張からきた過呼吸ね。
薬とかはもらってるの?」
「・・・いえ、病院には行ってません」
「そう、ならちゃんと行きなさい。
またさっきみたいになったら、今度こそ緊急搬送よ」
「はい、すみません」
「ちゃんと基山君にお礼、言いなさいよ」

保険医の先生が私に、前髪を引っ張られている基山先輩を指差す。

「あなたをここまで連れてきたの、基山君なのよ?
それに、どんな方法を使ったのか分からないけど寝ているあなたに薬を飲ませたのよ」

これって凄いことよー、と楽しそうに言う保険医の先生。
基山先輩を見ると同時に基山先輩はあさっての方向を見た。

「・・・せん」
「あ、ほら、夕映ちゃん!
もう放課後だし、帰ろうか!
先生、ありがとうございました!」

基山先輩は私の言葉を遮り、カバンを二つ持つと私の手を引いて保健室から出た。


「・・・先輩。
やけに唇と口内が湿っぽいのですが」
「気のせいだよ」
「先輩。何で目を逸らすんですか」
「そ、そんなことないよ。
あ、夕映ちゃん!クレープおごろうか?」
「・・・ありがとうございます」

基山先輩は移動式売店に私を置いて、走っていった。
私はというと、近くにあったベンチに腰を降ろした。

実は私は、先輩がどうやって私に薬を飲ませたか知っている。

先輩は、自らの口と私の口を重ねて強制的に飲ませたのだ。


感触を思い出し、顔が一気に熱くなる。
なんなのか分からない。
この気持ちが。

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