顔隠し
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ピィー!
試合開始のホイッスルが響いた。
神童君が南沢君にパスをして両者とも走りだす。
そしてまた神童君にボールが戻る。
「おらっ!」
相手チームがスライディングを仕掛けてくるが、神童君がすかさず南沢君にパスを出した。
「南沢さん!」
一つ頷いた南沢君にディフェンスが雄叫びをあげながら、突っ込んでくる。
南沢君はいつもの無表情で神童君からのパスを、ダイレクトでシュートをした。
「す、凄い…。でも、必殺技は…?」
「そ、それはたぶん」
「へ?」
パソコンから目を放さずに松風君に言う。
「まずは相手の動きを探るために、多少無理やりでもシュートをしてください、と南沢君に言ったからだと思います…けど」
右の角を狙われたシュートは、明らかに私の意見を無視して本気で打ってるのが分かった。
…まぁ、私の意見を言った瞬間、クセ毛を思いっきり引っ張られたんですけど…。
「入る!」
「…いえ」
キーパーは大きな体格で南沢君のシュートを少し動いただけで、軽々とキャッチした。
「あのキーパーは名簿で見ました…名前は、鉄雄田政志さんです」
「名簿?」
「あ、え、えぇっと、気にしないで下さい…」
松風君の視線を無視して作業に勤しむ。
鉄雄田さんがその体に相応しい豪腕でボールを投げた。