嫌われ

□ 狭苦しくて、
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血は案外すぐに止まった。
浅かったみたいだ。
ガーゼの上から包帯を巻く。
自分で切って自分で治療して、って馬鹿みたいだ。
冷蔵庫に向かって歩いていると家に鳴り響いたチャイム音。
宅配便か?
判子を持って一応覗き穴から玄関前を見ると、サッカー部のジャージが見えた。
二、三歩後ずさりする。
なんで、家の場所は両親を除いて有人とじろちゃんと源田にしか教えていない。
有人、有人が教えたの?
やだ、そんなの、嘘。
居留守を使おうと立ち去ろうとしたとき、スニーカーを蹴ってしまった。
扉にぶつかって無機質な音をたてる。

「*、いるのか!?」
「ひっ…!」

守くんの大声に身がすくんでしゃがみこんでしまう。
やだ、殴られる。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

「*、開けてくれ!
俺、俺…お前に言わなきゃいけないことがあるんだ!」

どん、と扉が叩かれる。
怖いよ、誰か助けて、やめて

「円堂、少し退いてくれないか」
「鬼道…」

有人の声。
やっぱり、有人がここを。
数回扉がノックされる。
さっきと違って優しい音。

「*。
俺たちはお前に話したいことがあるんだ。
ここを開けてくれないか?」
「ぃ…いや、だ。
聞きたくない…」
「…*。
少しの間だけでもいいんだ」
「やだ…やだよ…」

恐怖からか溢れ出てくる涙を拭う。
すん、と鼻をすすった。

「…*、お願いだ」
「………」

しばらくはお互い黙ったままだった。
結局私は扉を開いてしまった。
ただしチェーンがついたまま。
いたのは昨日のメンバーと守くん。
みんな不安そうに私を見ている。
大丈夫。
そう信じてチェーンを外した。




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