嫌われ

□ それでも世界は
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次の日いつもの時間に朝練に行く。
裏門からすぐの部室を開けるとかなり散らかっていた。
散らかるというより荒らされていた。
水無瀬さんか、となんとなく察する。
椅子が散らかり、机も倒れ、サッカーボールも散乱している。
よくもまぁここまで出来たって感じなんだけどなぁ。

「*ちゃん、これ…」

声に振り向くと秋ちゃんが絶望が混ざった目で部室を見ている。
あたしは軽く笑って部室の中に入った。

「まぁ水無瀬さんだろうね。
…片付けよっか」
「うん…」

二人で黙々と片付ける。
少しすると春奈ちゃんも来て、ため息をついていた。

「あの人、ですね…」

なんだ春奈ちゃんも気づいてたんだ。
まぁ新聞部だっけ?
情報をたくさん処理する部活だしね。
勝手に納得していると春奈ちゃんかあたしの両肩を掴んだ。

「私、わかってますから!
あの人のご機嫌とったりもしますけど、先輩の味方ですから。
頑張ってください!」
「う、うん。ありがと?」

お礼を言うと春奈ちゃんは満面の笑みを見せてくれた。
可愛い。

その場は三人で片付けてしまった。
もちろん後から来たメンバーは気づかないし、水無瀬さんは凄く悔しそうな顔をしていた。
ざまあみろ。
それにしても、と辺りを見渡す。
結構ぱっくりメンバーが割れている。
染岡と豪炎寺はかなり機嫌悪そうにボールをがむしゃらに蹴っている。
うひぃ、こわ。
水無瀬さんの味方であろう一年もびくびくしながら二人を見ている。
円堂と鬼道は何か言いたげにしているが、口を開いてはため息をついているようだった。
なるほどね。

「*ちゃん、どういうこと」
「なにが」

朝練は比較的やることか少ない。
だから普段はやらない場所を掃除する。
あたしはシンク、秋ちゃんと春奈ちゃんには余っているボール磨きをお願いした。
水無瀬さんは一応春奈ちゃんにはバレないようにか、あたしと一緒にシンクを掃除するふりをしながら話しかけてきた。

「なんで部室綺麗にしちゃったの?」
「あんたの思惑通りにはしたくなかったから」
「秋ちゃんを苛めてもいいの?」

シンクを拭く手がぴたりと止まった。
水無瀬さんを見ると長い爪がある指で布巾を動かしている。
力は入っていないけど。

「葉月って、好きなものとかコロコロ変わるタイプなんだぁ」
「……知ってる」
「だからぁやりたいこととかもすぐ変わっちゃうんだよね」

くすくすと水無瀬さんが笑う。
その顔はとっても歪んでいた。
あたしは布巾を強く握る。

「……なに、すればいいの」

水無瀬さんはとてもとても楽しそうに笑った。
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