アルストロメリア

□05
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『………はぁ…っ、はぁ…』


無我夢中で走っていたため、いつの間にか知らない場所に来ていた。
ここが何処なのか引っ越してきたばかりの私に分かる筈もなく、取り敢えず落ち着こうと深呼吸をする。

怖かったのだ。
誰かに自分の過去を知られることが。

全ての人が正臣の様に受け止めてくれるわけではない。
正臣だって本当は受け止めきれていないかもしれない。
自分だってまだ受け止めきれていないのだから。


『帰らなきゃ……』


…でも、どうやって…?

ここは一体何処なんだろうか…。どうしたら帰れるんだろうか。
道行く人に尋ねようにもこんな泣きそうな顔では無理だ。
タクシーを呼ぼうにも今は財布の中身が悲惨なことになっている。


「…おい」


ふと後ろから声をかけられる。
こんなときに誰かに絡まれるなんてついてない、と振り向くと、そこには今朝出会ったバーテンさんが立っていた。


『…バーテンさん…っ』

「お前朝会った奴だよな?ちゃんと学校間に合ったのか?」

『あ…はいっ、大丈夫でした』

「そうか、よかった」


安心したように笑うバーテンさんに自然と笑みが溢れた。と同時に何故がぼろぼろと泣き出していた。
何で泣いてるんだ…もう。


「お、おい…何かあったのか」

『…何でもないんです…。それより私……道に迷ってしまって…』

「迷子か」

『え……あ、はい』


あっさり迷子と言われてしまった…。
高校生って…子供なんだろうかと思いつつバーテンさんに駅までの道を訊ねる。


『駅が分かればなんとかなるんです…』

「あぁ、丁度その辺でトムさんと待ち合わせしてるから一緒に来るか?」

『はい!』


アリストロメリア05


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