アルストロメリア

□04
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「じゃあなー紀田ー」

「ああ、またなー」


しかし今回の風紀委員会は長かった。
素早く終わらせて結衣を追い掛けようとしていた俺の計画は見事に失敗。


「結衣の奴、一人でちゃんと帰れたかな」

「どうだろうね。走って帰っちゃったし」

「……は?」


校門を抜けると一番会いたくなかった相手が胡散臭い笑みを浮かべて待っていた。

どうして臨也さんが来良にいるんだ…?
それに何で結衣のことを…。


「結衣ちゃんにあることを聞いたら逃げ帰っちゃったからさ…今頃迷子になってるかも」

「…あること?」


訝しげに尋ねると臨也さんはくすりと笑って口を開いた。


「粟楠会の事だよ。彼女、粟楠会の所有物だったんでしょう?」


その言葉に俺は咄嗟に臨也さんの胸ぐらを掴んでいた。


「どうしてそれを…っ、どうしてその言葉をあいつに言ったんですか!」

「おやおや…、正臣くんはあのこの事になると必死だねえ。彼女持ちなのに他の女の子を気にしちゃ駄目じゃない。それともただ単に金のためにヤクザに売られた彼女に同情してるのかな?」

「……っ」

「でも彼女、色々あって親戚のところで暮らしてたんでしょう?どうしてわざわざ粟楠会に近いここに引っ越してきたのかな」

「それは…」


あいつの夢だったから。

親戚の叔母さん達がどうしてもここに結衣を近づけたくなかったのは知っていた。
だけどあいつは都会に住むことに何よりも憧れていたから。

だから、都会に来る夢を叶えてやりたかった。
その代わり俺が結衣を悲しませないように、傷付けないように守ってやれば良いのだと勝手に思っていた。


「君が彼女を守ればいいなんて考えは浅はかだね。だってもう俺に見つかっちゃったじゃない」

「人の心読んで核心突いて…だから臨也さんは苦手なんですよ…」


吐きそうになるほどの嫌悪感を堪えながらくすくすと笑う臨也さんを思いきり睨んでやった。
そうしたって奴は喜ぶだけだ。そんなこと分かってる。

臨也さんは暫く黙っていると、今まで見たなかで一番胡散臭い笑みを浮かべた。


「じゃあさ、俺があの子を守ってあげようか」



アリストロメリア04



(紀田くん目線でした)

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