アルストロメリア
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池袋、そこはまさに私の思い浮かべていた場所だった。
退屈すぎる毎日に嫌気が差し、昔の友人に誘われ親の反対を押しきってここの高校に通い一人暮らしすることを決めた。
ずっと田舎暮らしだった私にとって、初めて見る光景にあいた口が塞がらない。
それにしても見渡す限り人、人、人。慣れるまでは歩くだけで疲れてしまいそうだ。
「よっ、そこの可愛いこちゃん!」
ふと後ろから声をかけられる。
『正臣くん…っ!背伸びたね、凄い大人っぽくなった』
「結衣こそ可愛さに磨きがかかったんじゃないの!でも相変わらず背伸びないのな」
昔と変わらず笑う正臣に少し安堵する。
茶色かった髪は金髪に染まり、随分と声変わりをしていた。数年でこんなに大人になるんだ。
『そう言えば帝人くんは?確か私より一年早く来てるんだよね?』
「あぁ、あいつなら元気だよ!好きな女の子も出来たんだぞ!」
『おお!ついに恋しちゃったんだ!』
「そうそう!めっちゃくちゃエロかわいいメガネっ子!」
『やだそれ私の大好物!』
そんな会話をしながら彼は私が住むことになるマンションまで送ってくれた。何だかんだ正臣は優しいのだ。
『送ってくれてありがとうね』
「いやいや!結衣はすぐ迷子になるから送らないと心配で夜しか眠れないよ」
『夜寝れば充分だよ』
「まぁそれは冗談だが、慣れるまではむやみに歩き回らない方がいいぞ。特に夜は治安は良くないからな」
正臣は急に真面目な顔になって「黄色いカラーギャングが増えてるからな」と呟いた。
そんな彼に少し違和感を感じたが、すぐに話を変え無邪気に笑い出す彼を見てただの思い過ごしだと否定する。
「じゃ、気を付けろよ!何かあれば俺に電話でも何でもするんだぞ!」
『うん!ありがとう!』
こんな都会を生きる不安は彼によって軽くなった気がした。
家に運び込まれた段ボールは一つだけ。家族に許可を得ず出てきてしまったので結局荷物は最低限使用するものしか持ってこれなかったのだ。
それでも学費や生活費を考えると我が儘は言ってられず、明日にでもバイトを探さないと。と重い瞼を閉じた。
アリストロメリア01
(正臣さんテライケメン
だがしかし臨也落ち)