short
□酷い話
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白雪姫パロディ
グダグダです。
コンコンとドアを叩く音が響く
久しぶりの来客。急ぎ足でドアを開くと手に林檎の入ったかごをぶら下げた男が立っていた。
「君が白雪姫かい」
『はい、何の御用でしょうか』
「白雪姫にとびきり美味しい林檎を届けろと頼まれてね」
男はにっこりと笑いながらかごを差し出す。
少し不審に思いつつも貰わなければ逆に悪いかと思いかごを受け取った。
真っ赤に熟した林檎は確かにとても美味しそうだ。
『本当に頂いても宜しいのでしょうか…?』
「えぇ、なんなら少し味見をしてみてはどうでしょう?」
林檎を適当に一つ選び、一口かじってみる。
途端に苦しくなって咳き込むと視界が360度傾く。
立っていられなくなりそのままガクッとその場に倒れこむと頭上から男の笑い声が降った。
「おやおや」
『…なに…っ、…毒……?』
「そう。王女が君を殺せって言って聞かないんだよ。理由があまりにも理不尽だしあまり気乗りしなかったけど…あんなに大金差し出されちゃねえ?」
一体どういうことなのか理解できず眉をひそめると男はしゃがんで、倒れている私の髪を撫でた。
『……わたしが生きていると……そんなに困るんでしょうか…』
「みたいだね。まぁここで君が必死に命乞いでもすれば助けてあげなくもないけど」
男はそう言うと静かに笑った。
また私ってやつは誰かを悲しませたらしい。
殺したいと思わせてしまう程王女様を傷つけてしまったらしい。
『………助けてくれなくて…いいです』
黒い男は顔から笑みを消し去り、僅かに目を細める。
『殺してください』
人に妬まれるなんてもう慣れた。
誰かに美しいと誉めてもらえると同時に誰かに負の感情を抱かせてしまうことも知ってる。
いつからだろうか。人に誉められることを苦に感じ始めたのは。
呼吸が苦しい。不味い鉄の味。
視界が霞んでなにも見えなくなって、ずっとずっと溜め込んだ思いを涙と一緒に吐き出した。
『もう…妬まれて生きるのは嫌…』
「そう…」
「ここで君を殺すのは勿体無いな」
男は小さく笑って私の髪に指を絡ませる。
「今まで君が妬まれた分、俺が愛してあげようか」
悪者が王子になるだなんて、聞いたことがないわ。
それでも恋に落ちてしまっただなんて酷い話。
(臨也さんキャラ崩壊でした。名前変更なしですいません)