とても素敵な戴き物・管理人が嫁に出した捧げ物

□嫉妬と蛇
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大きな満月が照らす夜の道。
小さな少女の姿をした妖怪が1人歩いていた。
長いまつげに縁取られた大きな瞳、頬の傷とギザギザした歯が特徴的だ。ふわふわとした緩いウェーブのかかった長い髪を今はシニヨンに結っていた。
彼女の名はシット神。名の通り人間の嫉妬心を煽り、不仲を起こさせる妖怪である。
可愛らしい顔をしているが、眉間に少々皺が寄っていることから、あまり機嫌がよろしくないのが見てとれる。いつも通りブツブツと不満を口にしながら道を歩く。


「こんばんは、お嬢さん」
前方を見ると、1人の少女が立っていた。
白い肌、長く艶やかな黒髪は鴉の濡れ羽というよりは蛇の鱗の様だ。そして、金色の蛇の形のオーラをマフラーの様に首にまとわせていた。
月に照らされ長く延びる影は、細く長い蛇のそれ。

するり、と音もなく近くに来た少女にシット神は訪ねる。
「誰?…っていうかお嬢さんって私のこと?」
「今他に誰がいると言うわけ?」
口元はマフラーで見えないが明らかにニヤニヤとした顔で言い返されてシット神は少しイラっとした。が、比較的冷静に訪ねる。
「で、名前は?」
「私はトウビョウ。人間には他の名で呼ばれることもあるけどね。あなたは?」「…私はシット神」
促されるように名乗った名前を聞いて、トウビョウは途端に饒舌になる。
「嫉妬ねえ、良い名前。嫉妬、妬み嫉みは良いねえ」
変な妖怪。単純にそう思った。だって、
「嫉妬が良いなんて変わってるわね」
「だってさあ、そういう人間ほど私達に良くしてくれるもの。私は憑きもの神だからね。
私達を飼ってた人間はだいたい欲深で嫉妬心が強い性格だったし」
「飼われてたの?」
「うん、そういう性質の妖怪だしね。家に、家系に憑く妖怪だもの。ま、取り憑いた家はほぼ潰れるけどね」
自慢するでもなくさらさらと言ってのけるトウビョウに対して
「強いのね。妬ましいくらい」
冗談なのか本心なのか、シット神が一言、言い返すと、トウビョウはまたさらりと
「私に言わせれば私達を御することができない人間が弱いのよ。最終的にはいつも欲に潰される。」
と言った。
「そんなもの?」
「うん、あとついでに言うと私達思ったより仲良くなれそうだと思うんだけどどうかしら?」
「わかんないわ、でも考えといてあげる」
シット神の素っ気ない返事にこれまた素っ気なく
「そう。」
とだけ返して、トウビョウはまた表れた時と同じように姿を消した。

(じゃあ、また)
 

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