大友宗麟観察日記!
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「もう仮面は被らないのですか?」
『当たり前だ、そんな……物叩き割ったからな』
明智の部下が目を丸くして驚く中、紫智は笑っていた。
『あたしは大友紫智だ』
グダグダは嫌なんだ、いつものやり方でやらせてもらう。
宗茂さん、宗麟、マジごめんな。そろそろ限界だわ。
「信長公は驚くでしょうかね?」
『鼻で笑うんじゃね』
「あーありえますね」
『だろ』
「その愉快な舌を抜かれないように気を付けてくださいね」
『心配というより警告だよなそれ』
歴史上、信長って赤ちゃんの頃、乳母の乳首を噛み切ったんだよな?こっちの信長もそうなのか。
『……魔王、あんたに感謝してやるよ』
あたしは、あんたのおかげで自分を取り戻せた。前のあたしが会っていたら、間違いなくあの力に屈した。
小さく呟いた声に、隣の明智は楽しそうに笑った。
「貴方の絶望の顔は素敵でしたが、希望の顔も素敵ですよ」
『嫌味にしか聞こえない件について』
「褒め言葉ですって、失礼ですね」
『目を合わせろ、コラ、こっちみろ』
「はい、見ました」
『目を合わせろおおおお!』
イラっとした感情をはっきり表し明智を睨んだが、意味がない事に気づいて諦めた。
この状況を楽しんでいる明智にため息を吐いて前を向いた。
「こたびの九州の壊滅、お見事でした」
明智特有の、揺れながら歩く後ろにあたしは続いた。膝を着き、報告する姿からそういえば武将だったことを思い出す。
「命乞いをした者も、降伏を認めた者も皆殺し。まさに魔王その者の振る舞い。この光秀、心頭貴方様を尊敬しざるを得ません」
「御託は良い、貴様の働きを教えよ」
「三河の徳川家康を、同盟にありながら武田に寝返ろうとしたため粛清いたしました」
隣の紫智をちらりと見ると、特に動揺はしていなく信長公を見ていた。
「そして、原因の武田信玄も抹殺してきました」
一瞬、かすかに紫智が動揺した事が別ったが、そちらを見ずに続けた。
「伊達もいたはずよ、なぜ殺さなかったの?」
「必要とは思いませんでした。それに十分に戦力は削りました。これ以上は必要ないでしょう」
「光秀ぇ……近こう寄れ」
「っは」
歩みよる光秀、皆さんお馴染みのあのシーンがやってきますよ。
え?助けないかって?
バシャッ!!
「………邪魔をするか、大友の小娘が」
『いえいえとんでもない、ちょっと手が滑っただけですよ』
手から現れた粒子のアンブレラ………まあ、傘だよな。カッコよく言ってみたいんだよ!そういう年頃なの!
『いきなり部下に酒をぶっ掛ける上司が何処にいるんですか?織田信長さん』
「っふん、貴様に関係なかろうが」
『この人には少し世話になりましたしね、恩返しって所ですよ』
変態としては、酒ぶっかけたほうが良いとは思うけど………いや、助けない方良かったか?
『それにオレは、小娘じゃない。大友紫智だ』
「貴様の名など、どうでもよいわ」
『大友と縁のある、あの宗教を助けて頂きありがとうございます』
「信長様に感謝しろよ!壊滅ですんだんたからな!」
やはり条件を呑まなかったら、あそこは壊滅じゃすまなかったか。
ザビー達は生きている、きっとじっちゃんも……生きているさ。
「余の計らいにありがたく思うがよい」
『えぇ、感謝しますよ』
あんな無様な死に方のザビーを、宗麟には見せれなかった。生きてさえいれば、いくらでも未来を変えれるし、守れる。
『それで、なんであたしは呼ばれたのですか?』
「……濃、丸、光秀、下がれ」
「え?なんでですか信長様!?」
「蘭丸君、行きましょう?」
「信長様ー!」
ブーブー文句を言う蘭丸を連れ、何も言わずに濃姫さんが出て行った。
「なぁにをしておる、光秀」
「………いえ」
『明智、またいずれ………な?』
言葉の間に短く口の動きだけで紫智が伝えた言葉は、伝わりました。
いつものように、ゆらりゆらり歩き私はゆっくり扉を閉めていった。
『……妹さんは良いのですか』
「構わぬ」
『そうですか』
お市さんは、足に鉄球をつけながらただし他を見つめていた。
つまり、長政は……。