大友宗麟観察日記!

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それからも、ずっと尾張を目指して歩いていた。何度か無言が嫌なのか蘭丸が話しかけてきていた。

「おい聖女」

『なんでしょうか?』

「未来見えるなら教えろよ……信長様が天下を治めるんだろ!」

『……さあ、どうでしょうね』

「教えろよ、信長様に言いつけるぞ!」

『ああ大変ですね、どうしましょう』

「棒読みじゃねえかよ!子供のくせに生意気だぞ!」

『この中で貴方が一番、子供ですが?』

ショートコントが始まって、周りの織田兵士がだんだんクスクスと笑ってきた。なんか、宗麟とのやり取り思い出すな。

……いや、もう忘れるか。

「な、なんだよ!急に黙るなよ」

『いえ、私も弟が居たらと思いましてね』

「お前、蘭丸をバカにするな!」

隣の蘭丸をあしらいながら、紫智は頭で別のことを考えていた。

あの信長がなぜあたしを?
謎は全く解けない、今わかることは……いや、なにもわからない。

『とにかく、行きゃわかるか………』

「なんか言ったか?」

『……後三歩で、空からタライが降ってきますよ』

「そんな訳ない痛っ!?」

『………大丈夫?』

「いってーー!なんでタライが降るんだよ!?」

『さあ?』

今だ健在の、謎のタライ落とし能力。これでしばらく遊んでやるか。
一人で納得しながら、ギャーギャー騒ぐ蘭丸を笑いながら紫智は足を進めた。

「そういえばお前、本田忠勝と戦ったって本当かよ?」

『はい?』

また、そのネタか。
こっちはどう伝わったんだろうな。

「お前、本田忠勝相手に有利に戦い勝したんだろ。本田忠勝も大した事ないよな?」

ま た か。
…………完勝?圧勝とどっちが上だ?織田で完勝、武田で圧勝………東北に、やっぱで行きたくないな。

『引き分けです、そんなに噂は大げさになっているのですか?』

「そうだよ。大友の聖女は戦神の聖女だって蘭丸は聞いたけど?」

『……効果ありすぎでしたね』

ホンダム、マジでごめんなさい。滅茶苦茶な噂になっているよ。家康、ごめん………家康って織田の傘下にいたよな?

『蘭丸は徳川家康を、知っている?』

「あいつ、蘭丸は生意気でムカつく!」

『生意気?』

「そうだよ、あいつ最近変わりやかがったしな」

『変わったのか……家康』

「忠勝忠勝言わなくなったしさ、妙に大人ぶりやがって〜」

『そうですか、それはよかった』

「よくねえよ!この間だって……………」

妙に愚痴をいい始めた蘭丸に相づちをうちながら歩けば、一人の織田兵に目が合った。

………ペコリ。

頭下げた!あの人めっちゃいい人!!絶対にあの人滅茶苦茶いい奴じゃん!織田の良識人発見!

「聞いてんのかよ!」

『はいはい』

「はいは一回だろ!」

『はい、わかりました』

うわ、子供に注意されたよ。




「それでな…………っげ」

『どうしまし………あ』

露骨に嫌な顔をした蘭丸につられてそちらを向けば、みんなお馴染みの変態、違う。
みなさんお馴染みの明智光秀が立っていた。ついでにオレは、初プレイでこいつは使いやすかった。しかし、こいつ本体は苦手だ。

「光秀!お前何しに来たんだよ!?」

「貴方には関係ありません、黙りなさい」

やっぱりこいつら仲悪!?おまえら会った瞬間にこれなの!?
バチバチと火花が散る様子がすぐにわかった。この場から逃げたい人多いだろうな。

「帰れよ変態!蘭丸達は忙しいんだよ」

「私はこの娘を引き取りに来ただけです」

『……え、私ですか』

「でなければ、こんな餓鬼にわざわざ会いに来ませんよ」

「てめえ………」

「ねえ、聖女さん?」

知るか、つか振るな、このタイミングであたしに話を振るな。つか、変態退散しろ。
あたしの中では

変態<蘭丸<濃姫様=さっきの兵

なんだよ。変態は帰れ。

「あら光秀、何か用なの?」

「濃姫様!こいつ適当なこと言ってます」

「私は信長公の命でこの娘を引き取りに来ただけですよ」

「上総介様が?」

「信長公から、貴方へ文も預かりました」

変態が、濃姫さんに取り出した文を渡す。そして紫智のほうを見て微笑んだ。

こっちみんな。近付くな。

「おや、私は嫌われているのですか?警戒しないでくださいよ」

『いや……別に』

「無理しなくて良いぜ、お前もあの変態が気持ち悪いんだろ?」

「餓鬼は消えなさい、目障りです」

「なんだとー変態」

「黙れ餓鬼」

「変態」

「餓鬼」

「変態」

「餓鬼」

…………おまえら、本当は仲良いだろ?ほら、喧嘩するほどなんとやらだろ?

「紫智ちゃん」

『濃姫様?』

「光秀の言う通りだったわ、これでお別れね」

『そう、ですか』

ちょっと残念な気持ちを抑えて、濃姫さんに紫智は笑った。

「ほら、髪が汚れているわよ」

そう言って、濃姫さんがオレの髪に手を伸ばし顔を近づけた。

『………え?』

短く囁かれた言葉は、とても優しい言葉だった。濃姫さんの言葉に、一瞬涙が溢れたかけたが、ギリギリこらえた。
離れていく濃姫さんに、あたしは静かに頭を下げた。

生きなさい、絶対に。
あなた自身の為に。

あたしよりも、あんたのほうが聖女だろが………ありがとう。
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