大友宗麟観察日記!

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『……………』

「紫智」

『……………』

「………紫智?」

呼び掛けに答えず、無言で下を向いている紫智に、心配した宗麟は彼女の顔をのぞいた。

『……………グー』

「寝るな!」

『いで!?』

叩いた頭を痛そうに擦りながら、紫智は恨めしそうに僕を見た。
当たり前です、痛くしたのですから。

「食事をしながら寝るとは、器用ですね」

『いやー』

「誉めていません」

小姑のごとく、ピシャリと言われたら、紫智はぶつぶつ言いながら食事に戻った。

『眠いんだよ』

「氷水に顔でも突っ込みますか?」

…………ん、今のが宗麟の発言か?なんかあたしに影響されていない。大丈夫か宗麟。

『塩法師丸?』

「なんですか」

『…………まあ、いいか』




『ごちそうさま』

「待ちなさい」

手を合わせると、急いで出ていこうとする紫智を止めた。
すると、ギクリと大げさに跳ねながら体を止めた。

『な、何かな塩法師丸』

「今日もですか紫智?いったい何日満足に食べてないのですか?」

『そんなことないって』

最近の紫智は、食事をあまり手を付けない。
今日も全く手を付けずに行こうとした。

『そんなに腹が減らないから、な?』

「駄目です!!」

しかし今日は逃がす気はない。
振り切って逃げようとした紫智を、近くに居た宗茂が腕を掴んで無言で止めた。

『宗茂さん……』

「紫智様、島津殿の手紙に書いてありました。貴方様の拒食はザビー殿と居た時に既に『じっちゃんが?』

思わず宗茂の言葉を遮り、あたしは本当に驚いた。じっちゃんに気付かれていたことに。それに、この状況は少し不味い。

「この数日様子を見させていただきました、しかし紫智様は本当に………」

「紫智、話しなさい」

『………なんでもないからさ』

ごめん、だけどこれはあたしの問題だから。苦笑いをしたが宗麟は怒るばかりだった。

「貴方を医者に見せようも、貴方は脱走して時間もなく」

「皆が紫智様を心配しています、紫智様なら解りますよね?」

信者の皆が、紫智様を見ている。心配している。皆、気持ちは同じなのです。話してください紫智様。
塩法師丸様が紫智に近づいていく。

「何故いつも一人で悩むのですか、貴方だけの問題な訳わけがないでしょう!」

『大丈夫、だからさ……放っておいてよ』

「いい加減にしなさい!?僕らに話せない理由があるのですか!」

目を合わせようともせず、全てを隠そうと逃げる紫智と無理矢理目を合わせる。その目は罰が悪そうに、苦笑いをしていた。

『…………ごめん』

「紫智!!」

『頼むからさ、あたしのことは放っておいてくれない』

初めて聞いた、完全な拒絶の言葉に全員が唖然とした。それ以上に、僕は苛立ちが募った。
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