大友宗麟観察日記!
□16
1ページ/5ページ
家康をホンダムが迎えに来るまで、あたしは度々家康と話していた。お互い、暇潰しには丁度いいしな?
「そういえば、紫智は忠勝をなんで“ほんだむ”って呼ぶんだ?」
『だって、見た目からしてホンダムじゃね?』
「その、ほんだむって誰なんだ?」
『えーと……武装していて雷で起動する、すっごく強い最強カラクリ?』
「紫智!忠勝は忠勝だって言っただろうが!」
『だったら忠勝は人間だってここで断言しろや!?』
「忠勝は忠勝だ!」
『ウガアアアア!?噛み合わねえよ!?』
討論しながら吠えながら、紫智と家康は話し合った。話している内に、話題はお互いの部下になっていた。
『………あ、それでな、宗茂さんに向かって奥さんが関節技をかけてな』
「あの立花にか!?」
『もー塩法師丸の顔が真っ青!あれは笑えたわな』
「そういえば忠勝も、前に庭の木をひっこ抜いて大変だったな………」
『何があった、戦国最強……』
「確か…酔っ払った時に、ノリでやったらしいな」
『軽っ!?そんなんでいいのか本多忠勝!』
想像できない、酔っ払ったホンダムって……無理だわ。想像ができないな。無言で、「…………!」って位しか表現の仕様がないホンダムが?
「三河の皆で、アレは面白くて笑ったな〜」
『宗茂だって面白いぜ?オレの家で、踏み絵ができないから毎回迂回するし』
「迂回って、どこだ?」
『その名もギロチン横丁』
「ぎろちん?」
『鋭利な刃物が上から落ちてくる、実に不思議な横丁だけど?』
「そんな危険な横丁なるのか!?」
『ああ、普段は降ってこないよ』
「なんだ………」
『あ、けど塩法師丸が間違って押しちゃって起動した時あったんだよね』
「本当に大友は大丈夫なのか!?」
『あはは』
笑い合う、こんな穏やかな日常が続くなんて、思ってはいない。ただ、今はこの平和な時間を楽しみたい。
「紫智、1つだけ教えてくれないか?」
『なんだ?』
話題が尽きた時に、家康が真剣にこちらを見た。
「この争いが無くなれば、未来に平和は来るのか?」
『……どうだと思う?』
あえて何も答えずに、紫智は家康に聞き返した。
黙って考える家康を、じっと見つめた。
『………1つだけ、教えてやるよ』
独り言のように、紫智は話した。
『この世に生きる者の行動全てが、未来を今も変えている』
「生きる者、全てが…」
『家康自身、運命や未来を変えてるけど、簡単に変えられもする』
「なら、儂が元親や紫智の未来を、変えてしまう時があるのか?」
『もちろん、いろいろ変わったと思うけど?』
「それは良いことなのか?」
『その答えは、あたしはどちらとも言わないさ』
答えでない答えに、よくわからない顔をした。その顔をつねってやった。
「いててて!何をするんだ紫智、儂は真剣に!」
その言葉を遮り、紫智は家康に聞いた。
『ここが戦場で、目の前にある武将がいる、貴方は殺しますか?』
「………?」
『仮に殺すとするなら、貴方は敵を殺した英雄だ。しかし、殺された方から見て憎い悪魔だろう』
紫智は家康から視線を外し、小説の説明ように感情なく話した。
『逆に殺さないなら、貴方は何故殺さないと責められるだろう。しかし、相手の武将の家族誰も悲しまない』
さあ、答えは決まったか?と、表情が戻った
紫智が聞けば、じっくり悩んだようだったが最後に答えを出した。
「………正しい答えは、どちらでもあり、どちらでもない?」
『……正しいなんて考える事自体な、意味がないんだよ』
「紫智は、未来を変えたいって言っていたな?」
『ああ、勿論な』
「それは誰の為だ?」
『あたしが守りたい、たくさんの仲間の為かな?』
当たり前のように答える、紫智はやはり変わっている。けど……これが一番紫智らしくて儂は好きだ。
「……儂は、紫智の力になりたい。紫智を助けられるようになりたい」
『ありがと家康。けど、あたしより先にまず天下でも取りな?』
ケラケラ笑いながらあたしが言うと、何故か家康はすこし残念そうに見ていた。
『…もし貴方が、家や国に囚われずに、1人の人として生きるなら、考えて選びなさい』
「?」
『本当に選びたい道を、悩み考えて選びなさい』
「紫智……?」
『それが、私が貴方に言える精一杯の言葉です』
その言葉は儂に?
先ほどより大きな声で話す紫智はこちらを見て笑いながら言った。
『さあ、飯でも食うか!』
「確かに、腹が減ったな……育ち盛りか?」
『飯持ってくるから、待っててな?』
「わかった!」
廊下に出た紫智は、さっきまで居た武将の方をじっと見た。
言葉が伝わったか解らないが、伝われば良い。
『さて、飯ー』
「機嫌が良いな?」
『べっつに』
聖女の鼻歌が、にぎやかな廊下に小さく響いた。