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□ばーすでーあたっく
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「高杉?」

あ、と言って刀を下ろした高杉を、横に立っていた桂が怪訝そうに見やる。その視線を無視した高杉は、後ろで座り込んでいた銀時と坂本を振り返った。


「銀時、首とらせてやるよ」

「あぁ?テメーの首なら喜んでとるわボケ」

早く帰ろうぜと苛立たしげに続ける銀時の腕をとった高杉が無理矢理引っ張り起こす。睨みつけてくる銀時に機嫌よさそうに口角を上げた高杉を、坂本は首を傾げて見上げた。


「どうしたがー、高杉。おんしはこんなん好きろ?」

「もう0時回っただろ?」

「そりゃあもう何時間も戦っちゅうきに、とっくぜよ」

「なら決まりだな」

その言葉にピンときたらしい桂が眉を顰める。銀時の腕を引く高杉を制止しようとすれば、結構な三白眼でもって睨みつけられた。


「……高杉」

「黙ってろよ、ヅラ」

「趣味が悪いぞ。あとヅラじゃない桂だ」

「ねぇ、なんなのまじ。なんで俺?」

桂に刀を向けられたまま脂汗を流している天人の前まで背を押された銀時が、至極不機嫌そうに高杉を振りかえる。


「嫌かよ」

「別に今更追加で1匹殺そうが関係ねぇけどよ、こんなんお前好きじゃん。譲るとか、なんか裏でもあんだろ」

「いいから殺れって」

肩を組み顎をすくった高杉が、銀時の顔を天人に向ける。白夜叉、と小さく洩れた声に銀時が盛大に舌打ちをした。


「なァ銀時、考えてみろよ。こいつはこの死骸どもの上官だぜ?こいつの命令で俺たちの仲間は何人死んだ?数えきれねェよなァ。そこらへんの敵とは殺す価値が違うんだよ。こいつさえ殺せば俺たちが生き残れる可能性が少しは上がるんだ。なァ、ちったァ頭使えよ。こいつを殺したら俺たちにどれだけ良いことがあるか」

「……だから殺しにきたんだろうが」

瞳だけで睨みつけてくる銀時に、高杉がくつくつと喉を鳴らす。何やら様子がおかしいと踏んだ坂本も立ち上がり、二人を見つめる。


「分かってんならいいんだよ」

「だから何で俺がやんなきゃいけねーのかって聞いてんじゃん、馬鹿かお前」

「斬れよ」

質問には答えずにそう言った高杉の目がやけに真剣で、銀時は諦めたように刀を抜く。


「あーはいはい分かりました。やりゃあいいんだろ?めんどくせーな」

「よせ銀時、俺が……」

「邪魔すんなっつったろ、ヅラ」

刀を握りなおした銀時が高杉を振りはらって一歩天人へ近づく。ひぃっと声を洩らして後ずさった天人が、床に転がる死体に躓き尻をつく。

なんの躊躇いもなく振りあげられた刀が天人の太い首めがけて振り下ろされる。血が噴き出す音とともにごとりと首が落ちたのを見てから、銀時は高杉を睨みつけた。


「満足かよ」

「なァ銀時、誕生日おめでとう」

ニヤリと笑った高杉に、銀時も口角をあげる。


「おんしゃあ、なんちゅうことば言うがか?!」

「あァ?祝ってやっただけだろ。なァ銀時、これで何年経とうが忘れねェだろ?恨みも、憎しみも、無力さも……良かったなァ」

「高杉、いい加減にしろ」

「あぁ、いいよ。別に」

高杉を咎める二人を余所に、刀の血を払った銀時が鼻で笑う。興味なさそうな瞳が高杉を捉えて、心底どうでもよさそうに口が開かれる。


「馬鹿杉の勘違いを正してやると……まず一つ、別に今日が誕生日なんて限らねぇっつの。そりゃあ一年すぎりゃあ一つ年食うんだろうが、何回目なのかも知ったこっちゃねぇ。あの人がくれたもんだ、あの人が居なけりゃなんの意味もねぇ。喜びもなけりゃ、特別な日になるわけもねぇ」

つらつらと平淡な声で吐かれた台詞に高杉が顔を歪めた。それを見てけらけらと笑った銀時がそのまま続ける。


「もう一つ。こんな趣味の良いことしねぇでも、俺は忘れねぇよ。っつーか馬鹿にしてんだろお前、ぶっ殺すぞ?」

「どうだかな」

「お前みたいに年中殺気振りまく馬鹿じゃねぇっつの、俺は。むしろおかしいのお前だから。自覚しろやボケ」

最後に一つ、と言った銀時が刀を鞘に納めて高杉に背を向ける。


「何年経っても、なんて呑気なこと言ってたら死ぬぜ。俺よりお前のほうが頭ゆるゆるじゃねぇか。いつまでもはしゃいでんじゃねぇよ。ちったぁ落ちつけボケ」

「てめェ……」

「悪いけど俺、けっこー頭きてっから。向こう三年は話しかけないでもらえます?頭ゆるっゆるのお前が三年も生きてられたらの話だけどね。辰馬ぁ、説教はヅラに任せて帰ろうぜ。腹減ったー」

それだけ言ってとっとと歩きだす銀時に、坂本と桂がアイコンタクトを交わす。坂本はそのまま銀時の背に抱きつきに行き、桂は大きく溜め息を吐いた。金じゃねぇ銀だという声を聞きながら、じとりと高杉を睨みつける。


「何がしたいんだ貴様は」

「別に」

不機嫌そうに天人の頭を蹴り飛ばした高杉に「とにかく帰るぞ」と声をかけて、桂は深い溜め息を吐いたのだった。










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